監督、子供はこんなに善良じゃない

マーチン・スコセッシ監督の「ヒューゴの不思議な発明」を見てきました。

19世紀末から、20世紀初頭のパリ。音ならサティ

フランスのリュミエール兄弟が、興行として始めた映画。

スクリーンに映し出されたのは、レールに載った蒸気機関車が、遠方から手前に向かって驀進してくる映像。初体験の観客は、迫り来る機関車に驚き恐れ、自分に鉄のかたまりが覆いかぶさって来る・・・から、体をよける。

あ〜ら不思議、機関車はスクリーンが切れたところで、こつ然と消える。

それを観ていたのが、手品師のメリエス。奥さんと2人で舞台に立っていたが、「これぞ、新しい娯楽だ」と、自分も製作に乗り出す。

フィルム・トリックで作ったのが「月世界旅行」。大きな砲弾に人間が乗り込み、爆音と共に発射して、月の顔面に突き刺さる。

あの、有名な映画。

という、映画草創期へオマージュを捧げたスコセッシ監督。今年のアカデミー賞5部門で受賞した映画です。

撮影賞、美術賞、視覚効果賞、録音賞、音響編集賞

アメリカ人の監督が、パリを描く。

一方、同じく5部門で受賞したのが、「アーティスト」。無声映画からトーキーに移る時代を描いていますから「ヒューゴ」とズレはありますが、だいたい同時期を扱う。

監督賞、作品賞、主演男優賞、衣装デザイン賞、作曲賞。

こちらは、フランス人監督が、ハリウッドを描く。

映画といえば、ほとんどミニシアター愛用なので、たぶん、TOHOシネマズ渋谷は初めての入場です。シネマコンプレックスというやつ。

メジャー映画なので、観客動員数もハンパじゃなく、したがって、ロビーは芋を洗う状態。

並んでポップコーンを買う。さすが、TOHOは品揃えが違う。

プレーンとか塩味とかキャラメル味は、なじみです。しかしカレー味やバーベキュー味までそろってる。

「バターお付けしますか?」と訊かれたので、お願いすると、なんと、缶から突出したノズルで5〜6滴ふりかける。

じゃかバターのように、塊をベットリ乗せてくれる流儀ではありませんでした。

もう一つは、3Dメガネ。

かつては、タダでもらいました。ところが、今回は400円。さすが、優良決算企業のTOHO。

おかげで、我が家は2つ所有。

「ご注意ください! サングラスとして使用することはできません。3D映画の鑑賞以外には、ご使用にならないでください」と封入袋に印刷されてました。

やるな、と言われるとやりたくなるのが性分ですから、早速、ソウル五輪のマスコット「ほどり君」の目にかける。

撮影賞、美術賞、視覚効果賞、録音賞、音響編集賞って、どれもテクニカル系のアカデミー賞ですよね。

3Dになってりゃいい、ということから一歩も二歩も出て、3Dである必然性を求めて、最新の周辺技術を総動員したんでしょう。

その努力は、認められた。

とはいえ、未だ3D映画はティーンエイジャーが見る映画だとも感じました。

パワフルな効果はあります。奥行きの作り方が派手ですから。でも無理して、そういう設定にしている。

ヒューゴ少年とおもちゃ屋の老人の幻想譚なのに、淡くない。演技がおおげさですから、少年と老人それぞれの孤独感まるでなし。

少年が住む時計塔は、古い意匠を借りた最新式。よくあるでしょ? 中身はデジタルで、デザインはヴィクトリア調の金メッキ時計。誰も、見向きもしないやつ。つるぴか。

それに、幻影・魔法・ファンタジー・冒険映画というと、判で押したように、善良な少年が主人公というのも、なんだかなぁ。

スコセッシ監督、尊敬してます。

ぜんまいや振り子やチェーン、蒸気機関の煙、駅に張られたアールデコのポスター、みんな好き。

だから、残念です。下の広告に「ヒューゴの不思議な発明」が載る時があるのも、皮肉でいいねぇ。

3月は、ヴェンダース監督の「ピナ・バウシュ」も予定してます。こちらはどうでしょうか?

3Dメガネ、今度は持参を肝に銘じる。