天使にラブソングを シアターオーブ
夏になると、ミュージカルに行く。
まず、バッチリ冷房完備だから。次に、ヒットしたプログラムが来日するので、すぐなじめる。
今回は、渋谷のシアターオーブで、「天使にラブソングを」。8月2日までやっている。
ウーピー・ゴールドバーグとハーベイ・カイテルの映画は、長く尾を引いた。忘れられない。「ウーピー、可愛いい」。もう20年くらい前の話。
来日舞台は、ウーピーがプロデュースしたらしい。
映画に出て来た曲と違う。一からやりなおしたのだろうか。可笑しくて、可愛くて、ハッピーで。理屈ナシ。
「あぁ、楽しかった」。
例によって、入場の時にチラシを大量にくれる。気になった2件。ボブ・フォッシーものミュージカルだ。
9月の「ピピン」と、12月の「シカゴ」。
舞台は度々来られない。映画「キャバレー」「オール・ザット・ジャズ」を、も1回見ようかな。
踊り候え 鴨居玲
7月20日で終わった展覧会。
東京駅ステーションギャラリー「没後30年 鴨居玲 踊り候え」展。告知にあった「出を待つ道化師」の絵が、やたら気に入った。
どんな人?
「踊り候え」風来舎刊を読んだ。
1985年、排ガスで自死。何度も未遂を繰り返した後だった。本は89年の発行だ。
40代の遅いデビューながら、たちまち人気画家となる。日動画廊が支えた。現在も、彼の作品は売れるので、どの画廊も「高値買い取り」をするらしい。
集客も堅いから、ステーションギャラリーは展覧会をやったのだろう。
まずもって、いい男。ハンサムなのに玲という性差を超えた名前にしびれる。下着デザイナー羊子の弟。
そして、描く人物の表情があいまいなのも、見る自分に仮託できる。
・私が目の表情を画面に描きこまないのは仏像の影響なんです。
安っぽい仏像は視点が定まっているらしい。表情が1つだけ。多くの人に語りかける仏像は、ちょっと斜視で焦点がない。
そういうものなのか。描く人の性格を一つにしないために、
・目の玉を描いてないんです。
言われて、目をあいまいにする絵を初めて見た。
本人は言われるのをとても嫌がったらしいが、とにかく達者だ。
売れれば売れるほど、本人を追い込んでいったのか。鑑賞されることに耐えられなかったとか。
世界”笑いのツボ”探し ピーター&ジョエル
電車の中吊り広告を読むのが趣味の人はいませんか?
Koyama Driving Schoolの「教習所 ふきだしコンテスト」は、毎回秘かな楽しみだ。
自動車教習所も生徒集めに苦労していて、アイデアが出尽くした感があるところに、数年前から「ふきだしコンテスト」シリーズをやっている。
世界の交通標識には、思ってもみなかった面白ビジュアルがある。
今回は、スペインの標識。男が体をのけぞってる。体の外には、電気ビリビリっぽいギザギザがある。
ふきだしに一言を入れて応募する。最優秀作なら5万円くれる。9月30日まで受付けてるぞ。
「世界”笑いのツボ”探し」CCCメディアハウス刊を読んでいる。
アメリカ人のピーター・マグロウとジョエル・ワーナーの底抜けコンビが、「可笑しさの素」を求めて世界漫遊する。
A Global Search for What Makes Things Funny。
文中に、度々ユーモア本が紹介されている。
ところが、ほぼ全部、日本語に翻訳されてない。この異常さは、おもしろみとは際立って地域独特のコミュニケーションだということだ。
翻訳しても、日本人には何がおかしいのかわからない。注釈付ければ、なお状況は悪くなる。
2人は日本に来て、ヨシモトを取材した。ギャグの中身より、社員の対応のほうがよっぽどファニーなのだ。
世界はゴ冗談 筒井康隆
筒井康隆さんは、毎日どれくらい書いているのか?
最盛期に比べれば量は落ちてるはず。落ちても、毎月定期ものを発表してるか?
「世界はゴ冗談」新潮社刊。
月刊雑誌に載せたものをまとめた本。「文学界」2012年4月号に出た「三字熟語の奇」は、
編集者に原稿を強要されたか、それとも、編集者を脅迫して掲載させたか?
・一大事 一目散 ・・・ 一夜妻 一文銭
二枚舌 青二才 ・・・ 三下奴 南無三
このまま、ずっと書き写すのは疲れるので、以下略。
量をまとめると、1行に8つの三字熟語を並べ、それを294行延々と・・・。数えるだけでも疲れたぞ。
こういう芸は、辞書を引いてできるものじゃない。幼少のころから文字と遊び、脳のシワにこびりついているものなんだ。
・肌襦袢 曲線美 横恋慕 野暮天 相合傘 朧月夜 厚化粧 後始末
この行は、毛ずねでもむしりながらペンを進めたか?
・駄法螺 画期的 必然性 形而下 多元論 芸術院 単細胞 決定版
自作寸評か?
文豪筒井康隆は、たまにテレビに出演する。
あやしくて、とっぽい。風格をどっかに忘れてきたようだ。
100歳のジャーナリストからきみへ むのたけじ
むのたけじ著「100歳のジャーナリストからきみへ」汐文社刊は、前にも友だちからもらった。「学ぶ」編だった。
全5巻のシリーズで第2回配本は「平和」。
今年は敗戦70年。朝日新聞記者のむのたけじさんは、30歳で敗戦を迎えた勘定になる。
「さんざ嘘を書いて来た」から、新聞社をやめた。辞表に留保無し。やめる、以上。
3杯飲むと腰が抜けると評判のデンキブランが飲める店。
浅草の病院に勤めていた親父は、飲めないのになぜかデンキブランを家に持って来た。もらいものかもしれぬ。
一口飲んでひっくり返り、小学校前の息子には父親がなかよしになった。
地上5階地下1階の神谷バー建築は、昭和20年代のいかがわしさがにじむ国の登録有形文化財だ。
むのたけじさんも来たことがあるだろうか?
鬼の哭く山 宇江敏勝
ジャケ買い本。
つい1ヶ月くらい前に、京橋のフィルムセンターで鈴木一誌さんの話を聞いた。
自らすすんで素材を集め、その集め方が徹底している。これが作品を深いものにしていたのだ、と納得した。
話は、キャリアの始まりにも触れていた。
学生時代から映画人と付き合っていたので、映画の本で作品を蓄積していったのだ。
僕はむしろ映画本より、思想系の本の装幀で名前を覚えた記憶がある。
「鬼の哭く山」も、どれだけの原画を集めただろうか。それを濃いベージュとグレーと水色の3色使いで、熊野の霊験を見せる。
宇江敏勝は三重県の炭焼きの家に生まれた。林業やりながら文学を目指し、熊野古道の語り部となる。
新宿書房は「宇江敏勝の本」全12巻をすでに出していた。
友は野末に 色川武大
麻雀をやらないから、「麻雀放浪記」は読んでない。阿佐田哲也の名で裏街道を書いた。
こちらも読んでなかった。
新潮社が「友は野末に」を出したのは、何かの思惑があってのことだろうか? 基本は「色川武大 阿佐田哲也全集」福武書店刊から引いてきた9つの短篇集。
・その時分、教師が、君は将来何になりたいか、という設問をして、席順に隅から答えさせていった。
少年は答えようがなく、考えようともしなかった。
・私の席のうしろの生徒まで順番が来、次に教師は私を黙殺して、前の席の生徒の名を呼んだ。
これ、本人はいじめと感じた?
教師に限らず、あらゆる大人にとって無秩序、無個性、無気力な若者になっていく。
・決して本格的な勝利など望んでいないのに。
人付き合いでNoといわなかった色川武大 阿佐田哲也。外面の優しさは、20年連れ添った女房には
・翻弄されていた日々のことを思い出して憤慨すればボケないかしら(笑)。
となる。
「離婚」で妻を、「百」で父親を、「狂人日記」で自身を書く。