間と目つきだけで笑わせる師匠

鼻水を垂らしながら、カンタス村田を見てます。

水泳の背泳ぎをやる方は、先刻承知でしょう。鼻に水が思いっきり入る。中で粘着物質がブレンドされる。鼻水化し、時刻を問わずに、とめどなく流れ出る。

先端、水滴状ながら、間延びしてちぎれず、ブラブラする。

したがいまして、お客様。

ポケット・ティッシュなどという屁みたいな量では間に合わないので、トイレット・ペーパーを1巻かかえて「港ふれあい寄席」に見参。

落語のCDを集めて本格的に聴くようになったのは、柳家喜多八瀧川鯉昇両師匠の、気だるくて脱力した味のとりこになったからです。

今回のお目当ては、鯉昇(りしょう)師匠。

現在は11人もお弟子さんが揃っているというから、立派な鯉昇一家です。

前座名・鯉奴(こいぬ)、現在は二ツ目に昇進した鯉橋(りきょう)兄さんの噺「元犬」。

長屋の掃き溜めで産まれた白い野良犬が、八幡様に願をかけてめでたく人間になる。だけど、犬の習性はそのままでしょ?

口入れ屋(転職斡旋業)の上総屋が、シロを連れて奉公先をさがす顛末。

「なに、うなってるの?」

「あそこに、猫がいる」

「いたって、いいじゃないか」

「喰いついてやろうかと」

次いで登場、端唄・俗曲の檜山うめ吉姐さん。

木更津甚句、品川甚句、深川くずし、都々逸、小唄、そして木遣りくずしで一舞。

間に、おしゃべり。姐さんの髪は、地毛だそうです。結いあげも自分でやる。最初は1時間かかったが、毎日のことなので、現在は20分ほど。

って、洗髪も毎日やるのかなぁ? たいへんだろうなぁ。

これは「うめ吉新聞」を配ってテンテコマイのところ。

去年11月から、今年2月までの活動報告。ライブハウスやレストランでの公演、テレビ出演、出身地・倉敷の観光PR、「うめ吉と行く四国の旅」と盛りだくさん。

5月12〜13日にもシリーズ第6弾「うめ吉と行く東北の旅」をやります。どう?

鯉昇師匠は、二席相勤めました。「長屋の花見」と「お神酒徳利」。

近所でも評判の貧乏長屋。大家さんが一生懸命にもりあげようとするも、いやいやながらの店子の連中。

お酒は、お茶。卵焼きはたくわん。酔ったふりして大騒ぎ。

師匠の「長屋の花見」は、随所に脱力演出があって、ほんとに愉快。

「お神酒徳利」は、正調なのを初めて聞きました。楽屋を訪ね、師匠に解説されて納得。

昭和天皇に御前落語をやった三遊亭円生師匠の「お神酒徳利」が本寸法で、僕が今まで聞いていたのは、3分の2程度でした。

占いの噺。心得がないのに、3度も切り抜けて、おかみさんにはお金が入るので、おめでたい。

「明日は、日本橋の中学校で演りますよ」。中学生に落語を聞かせるのは、たいへん。

でも、中で一人くらい「なかなか、おつでげすナ」と感じる子、いないかなぁ。