たまには、見えないことも見る

かける言葉がありません。山本美香さんの両親、孝治さんと和子さんへ。

70歳代の両親を残して、彼女はシリアで露と消えた。

従軍ジャーナリストには、思い入れがたっぷりあります。

男なら。

戦場は我が身の彷徨を、命とひきかえにする容赦ない場所。露骨な欲望、ろくでもない現場にいることが、嘘くさい安寧にいるより、まだまし。

女なら。

これは、わかりません。でも、両親の気持ちになれば、胸が締め付けられる。誇り高い娘と、先に逝ってしまった娘の落差に混乱しているでしょう。

山本美香さん。仮託すれば、あなたはアデルのようにりりしい。

同じ新聞に載っていたのが、「干上がる食糧庫」の記事。

アメリカの穀倉地帯が56年ぶりの干ばつというニュース。なかでも、トウモロコシが大打撃。大豆、小麦がこれに続く。

すると、どういう流れになるか?

トウモロコシ不足 → 価格が高騰する → 牛の餌が高くなる → 肉・乳製品が高くなる。

日本は、トウモロコシを91%輸入しているので、今年の年末は値上がり確実。困る。

いつもと、趣向が違うこと書いてますね。

川好き・緑道好きなのは、前から書いてました。それで手にしたのが「地下水は語る 見えない資源の危機」守田優著。

最初は、アメリカのオガララ帯水層の説明から。

音感が気に入ると繰り返す癖があるので、「オガララ オガララ」と声に出して読んでいると、アメリカには巨大な地下水脈があるという話。

サウスダコタ州からネブラスカカンザスコロラドオクラホマニューメキシコ・テキサスまで南北1200km、5万6千300平方キロ。

全米灌漑面積の約3割。この農業用水を、オガララ帯水層から汲み上げている。

半世紀間、大量に汲み上げてきたので、水位が半分以下になってしまった。世界最強の田舎、アメリカ大穀倉地帯グレート・プレーンズ、これからどうする?


 
話が大きすぎるから、僕のサイズに合わせてチマチマさせましょう。

目黒川の内陸部、池尻大橋から千歳烏山に向かって烏山川緑道が通っていることを発見した時はうれしかった。

人生、いこいの裏道。

そこで、浮き上がったマンホールを見る。「地下水は語る」を読んで、合点がいきました。つまり、地下水を汲み上げすぎて、地盤沈下しちゃったのです。

これを水文学で、「抜け上がり」という。なに、水文学って? 水をテーマにした文学?

違うのよ、お客さん。

「すいもんがく」って読むの。守田優さんは、都市水文学・地下水水文学の専門家。

地盤沈下といえば、江東・江戸川・墨田区の東京ゼロメートル地帯が有名ですね。

なぜ、そうなったか? 明治以降の工場群が、工業用水に汲み上げたから。ストローでチューチューやる程度なんてもんじゃなく、暴力的に揚水した結果だったのだ。

散歩していると、意外な発見はするもので、ホテルニューオータニ前にある清水谷公園でも、水位計のプラントを見ました。地盤沈下を見張っている。

敷地内の地下水は、「私水なのか、公水なのか?」。そういう課題があるんだね。

もどって、山本美香さん。あなたは地下水脈になりました。Someone like you