墨田のオクトーバー・ブライド

落語で、「浅草寺の裏」といえば吉原のこと。地図でいえば北。一方、浅草の南にあるのが衣料問屋街の横山町。

時代は移れど、業かわらず。

浅草駅から吾妻橋隅田川を渡れば、墨田区。浅草のにぎわいに比べれば、ぐんと静かになる。東京スカイツリーができてからは、少し人出もあるけど。

橋を渡って、右手(南)を歩くと本所。左手(北)に行けば墨田公園。ここまで、付いてこれない人は地図を見てね。

公園の解説板を読んだら「旧水戸藩下屋敷」とあったから、これで落語「文七元結(ぶんしちもっとい)」の地理状況、動線がわかった。

左官の長兵衛は、本所に住んで吉原まで出掛ける。横山町のべっこう問屋で奉公する文七は、水戸様のお屋敷に出掛ける。

2人は、帰りに吾妻橋で出会う。Xの交点が吾妻橋の上。50両を紛失し身投げしようとする文七と、娘お久の身売りでこしらえた50両を懐にする長兵衛のかけひき。

数々聞いた「文七元結」で、ダントツは立川談志のもの。三遊亭円生師匠も、かなわない。博打で身をくずす職人と吉原のおかみが高座にいた。

「警察調書」藤原書店刊。

剽窃と世界文学の本。文学はどこまでがパクリか。マリー・ダリュックは、自身の著作を剽窃と告発されて、敢然と過去の作品を調べた。

進化・退化はすれど「オリジナルなんて無い」が僕の持論だから、とてもスリリングな本だった。オリジナルを言い始めると、落語は剽窃話芸ということになる。

お久は、めでたく文七と結ばれる。いました、旧水戸藩下屋敷跡の隅田公園に、平成のお久と文七。

トッド・ラングレン