枯れるかもしれない言語

第一回須賀敦子翻訳賞開催が決まってから、どれだけ待ちわびたことだろう。

受賞作が発表された。時を移して、イタリア文化会館で授賞式があった。

いわゆる文学系の授賞式というものを見たことが無い。東京会館あたりで金屏風を背にスピーチがあり、あとは酒席という進行か。

来場者4分の1はイタリア人というのが、まず雰囲気ある。エリック・サティのピアノ、ジムノペディとグノシエンヌ演奏から始まった。

続いて、竹下景子さんの朗読。

読んだのは須賀敦子著「イタリア語と私」「ふるえる手」などから抜粋して。外国語に接する揺らぎを吐露したエッセイ。

カゼッラのピアノ演奏に続いて、いよいよ本番。

選考委員の中に柴田元幸さんがいた。彼はイタリア語はできないと思う。日本語に翻訳した、そのこなれ方を審査したのだろう。

受賞したのは3人。

「カオス・シチリア物語」白水社刊を共訳した白崎容子・尾河直哉さん。「月を見つけたチャウッラ」光文社古典新訳文庫刊で関口英子さん。

2冊とも、ピランデッロの短編集。19から20世紀をまたぐノーベル賞作家だった。

翻訳賞開催が発表されてから読んだのは「月を見つけた〜」のほう。これ、井上ひさし宮澤賢治南イタリア版だった。

関口英子さんがスピーチする。

外国産の植物を移植する思いと、翻訳作業を語る。根付いてほしい、でも枯れちゃうかもしれない、と。

続けて、イタリア語と日本語で「使徒書簡朗誦係」の一部を朗読した。

これで数十編が訳された。でも、残り200編もあるというから、シリーズ化してほしい。

★旅する目玉 サディ・レベッカ・スターンさんの絵 

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