美術館以外にもミュージアム
長崎にある平和祈念像。男は右手を天に、左手は冥福を意味するように水平を指す。
この彫刻を5年かけて製作したのが北村西望(にしも・せいぼう)さん。
像は巨大だ。アトリエの高さ9.7mぎりぎりの高さ。井の頭自然文化園のアトリエ館内部に息をのんだ。
すでに西望翁70歳。あの力感あふれる祈念像と、ここで格闘していたと思うと。
まず1年半かけて試作し、何十体の雛形を作ったか。そしていよいよ原寸で木組みが始まる。すでに、これが作品だ。
むしろで覆い、石膏を塗布し、原型ができたらブロックに分けて鋳造。
製作過程そして作品群にも圧倒され、刺激されて「ミュージアムの思想」白水社刊を読む。
明治に、ミュージアムを美術館・博物館と訳したことがそもそもの誤りで今に続く。
語義には、文化・芸術・科学・歴史などの観念が最初から含まれていた。
つまり動物園・植物園・水族館・文学館・郷土資料館・公文書館・図書館・歴史的建造物・保護区・国立公園。
すると、ジオパークもユネスコの世界遺産もミュージアムなんだろう。
それを保存・研究・教育・レクリエーションを目的に、ひとまとまりの文化財を提示する機関全体をミュージアムという。
私有を手放した公共財産なのだから、管理・運営は公開性の原則で貫かれていなければならない。
公共は官に預けるものではない。官と民で担うもの。ミュージアムなら、僕は一肌脱ぎたい。
★旅する目玉 すぎはらゆりさんのマトリョーシカ
♪旅する鼓膜 オペラ「道化師」より フィナーレ