戦前のビジュアル剣士
とっても似会ってた。
彼は大河内伝次郎の映画を見たことがあるのだろうか? そんなわけない。
じゃ、大友柳太朗? 違うだろう(たぶん)。阪東妻三郎? 中村錦之助? 丹波哲郎? 豊川悦司? 以上映画。
弥生美術館の個展に合わせて発行された図録。時代小説の挿絵画家・小田富弥の生誕120年の記念展。
明治に生まれて1990年、94歳と長寿をまっとうした。
小松左京との対談で開口一番、
「たいへん申しわけないのですけれども、まだご健在だとは・・・」が1974年の時点。
年譜を読むと、やっぱり華は戦前。
丹下左膳は39歳の時に描いた。名古屋新聞の連載小説233回の挿絵。でもモノクロ。
左膳のビジュアルを決定づけたのは、43歳時の新潮社の装丁だった。
痩せて赤茶けた髪。左目はうつろに窪む。右目には額から頬に一直線の刀傷。右手無し。女物の長襦袢の上に、白紋付の着流し。
して、道場破りなどは普通にやる。酷薄に切って切って切りまくる殺人鬼。いや躍動。
そういえば、丹下左膳の原作者・林不忘は3つのペンネームを使い分けた超売れっ子作家。こちらは35歳に過労で没。