老舗母さんと仲良しになる

「かしわ餅」と墨書された下に、菖蒲の絵が描かれた旗を見つけたので、あぁ、そろそろ子供の日だと店に吸い寄せられました。

間口が小ぶりな江戸細工のような店。とはいえ「御菓子司 亀屋大和」とガラスの引き戸に大書されているから、老舗でしょうか?

団子と柏餅が並ぶウィンドぅ。僕は和菓子を見ると、いつも手のひらを連想します。こねて、ちぎって、まるめる。「いらっしゃいませ」と、笑顔で奥から出てきた、いかにもお母さん顔のかわいいことといったら。

I can't stop talking you.



江戸時代・文政7年(1824)に、大阪で出版された「江戸買物独(ひとり)案内」に、すでにこの店は紹介されたいたらしいです。

相撲の関取を網羅した番付に見立てた、菓子司の番付にも載っていて、それが遠慮がちに壁に貼ってある。

焼き団子は、京都下鴨神社の「みたらし団子」に由来する、とのことでした。4月30日には日本テレビで、めずらしい「みそ餡柏餅」が紹介されるというので、1本所望。「お代はいらない」と言うけど、拙者そうはまいりませぬ。

「包む柏の葉は香りがいいでしょ。ウチは乾燥葉を一回煮出したものを使うので、食べながら葉の香りも楽しめるの」。こういう奥ゆかしい、たぶん正統派の味わい方を教わると、僕は、いかに毎日を鈍感にくらしているか恥じ入る。



加代子さん、八代目。

「この店が実家なんですか?」

「私は5人姉妹でした」と、谷崎潤一郎細雪のようなことを語りだすので驚く。両親のこと、嫁ぎ先が老舗だったこと、家業のこと、九台目の息子さんのこと。

東神田一丁目の伝統のある土地は、どんなに新しいビルやフランチャイズの店が出店しても風合いが残る。住民の喜怒哀楽が堆積している。

ホームページ http://kameyayamato.co.jpは、九台目が開設したんでしょうね。