愛書家の本棚から子守唄へ
何にもしない夏休みって、かつては考えられませんでした。古本購入に邁進していた15年間ほどは、夏ともなれば、全国の古書展会場や古書店を回ってました。
その土地、その土地で買い込んでは、その都度宅急便で東京に発送していたのです。
数年後、気に入った会場ができ、毎年通うようになったのが、京都・下鴨神社境内で開催される古書市。
夏の盛り、全長100m両サイドにテントを張り、主に西日本の古書店が集結します。気合いを入れて探書していると、疲れます。
1店を見終わると、疲れて10分休憩。半分ほど見終わると、休憩時間も20〜30分必要になります。数日間開催するのが、せめてもの救い。
神社の境内ですから、能舞台もあります。その舞台で、前後不覚になって眠ったこともありました。
そんな記憶がよみがえったのは、クラフト・エヴィング商會著「おかしな本棚」をパラパラやっていたからです。
本好きな方なら、ご存知でしょうクラフト・エヴィング商會。一応、本の装幀を仕事にしてます。ですが、それにとどまらず、著者もやります。
著いた本のタイトルは「ないもの、あります」とか「どこかに いってしまった ものたち」とか「すぐそこの遠い場所」とか。
タイトルの文言で「匂う」と感じた方、正解です。稲垣足穂や野尻抱影やマグリット + 戦前日本モダンを、現代のセンスで解釈する夫婦ユニット。
2人の蔵書を、テーマ別に分けて、写真と文章で構成したのが本書です。
もちろん、蔵書のなかには古書も多い。「全部、読んだんですか?」と例によって問われ、「読んでません」と応える。本を読んでない人は、本を読むだけのものと思っているので困ります。
遠くから眺めたり、指先で触ったり、匂いを感じたり、造本の体裁を鑑賞したり、発行年を想像したり、とにかくいろいろ楽しめる。
すでに、お盆休みで休暇を過ごしている方も多いでしょう。それでは、京都地元の「竹田の子守唄」を聴いてください。いかにもお盆の風景です。