もう一つの染五郎兄さん

10年ほど前から、全国の文系大学は所在地にちなんだ地域学を始めています。渋谷にある国学院大学は、現在も「渋谷学」を続けています。たぶん、創立周年記念事業としてスタートしたのでしょう。 とにかく、僕はそれの第1期目に参加したのです。

渋谷の過去から将来まで、年間を通じて30コマくらいの本格的な講義でした。毎回プリントが配られて、わけても渋谷が書かれた過去は、古文書を読むので「まるで文学部の授業のよう」と、苦労しました。

そこで初めて知ったのが、「金王丸(こんのうまる)」という若武者。ちょうど渋谷警察の裏に金王八幡宮があるので、その関連? と興味がわきました。

いや正直に言います。武士の幼名として「丸」をつけた日本の習慣が好きだったのです。なんとなく、きかん坊な感じで。



清里から東京に帰ってきたのは、市川染五郎兄さんの「渋谷金王丸伝説パート2」を観たかったから。

1日だけの公演です。会場の渋谷区文化総合センター大和田で、こけら落としに公演されたパート1が好評で、開場1周年に再演された今回。

3部構成で、まず、染五郎さんの踊り。常磐津に合わせて「松島」。名勝を旅する人の心情を舞う。

男の舞踊って、観たことありますか? 僕は初めて。りりしいです。男前です。端正です。シャキッとします。

舞台は、きちんと掃除して雑巾がけしておかないとまずいよね、と思わせる舞。



次が、当日のメイン「創作傾奇(カブキ)おどり KONNOMARU伝説」でした。ここで、染五郎さんが古典歌舞伎とは別の道も挑戦していることを知る。

彼は、現在38歳と思われます。浅草三社祭りや、神田明神の祭りでも見かける町内の若衆と同じ、気風と色気。

渋谷の街に地震を起す大鯰にたじたじの金王丸。追われ追いかけ奮戦し、要石を持ち上げついに退治する物語。

アップテンポな三味線と和太鼓で、激しく楽しく躍動する舞台。照明もロックのステージに似てました。

着ぐるみの大鯰も、フィナーレでは「反省の踊り」を舞って大喝采。と共に、地震よけの紙片が上から降ってきて、皆んな喜色。

こうなりゃ、金王八幡宮に行かなきゃなるまい。

鎌倉幕府を開いた源頼朝。その父・義朝に仕えたのが金王丸。保元の乱出陣前に、母親に自身の自作の木像を手渡す。それが、境内奥の御影堂(みえいどう)に納められています。

残念ながら普段は鍵がかかっていて見られません。

お堂前の狛犬に、「彼によろしく」とあいさつだけ。阿形の狛犬も「ああ」と生返事でした。



★それでは「音だっち」ツネツネから。ピアノはいいねぇ。

・本日のおすすめ。オリジナルラブ「接吻」JAZZアレンジです。

http://www.youtube.com/watch?v=5yG17142Lag