一足早く、極月12月に行く

9月になりました。汗をふきふき残暑の中、冬の定番「忠臣蔵」を聴きに永田町・国立演芸場に出向きました。

忠臣蔵」は小説・TV・映画ばかりでなく、歌舞伎・落語・講談にもあります。今回聴いたのは、浪曲。「旅ゆけばぁ」の浪曲です。

皆さんは浪曲を聴いたことありますか? 僕は浅草の木馬亭やCDで聴いてました。「がまん」を表現する演芸です。僕ががまん強いという意味ではありません。むしろ苦手なのに、浪曲は好き。

国立演芸場の観客は、高齢率高けれど満員。僕の両隣は30代とおぼしき女性で両手に花。絽の着物。うれしい。



これは講談でよく語られますが、「忠臣蔵」にはストーリーを追いかける「本伝」の他に、「外伝」や、個人個人を取り上げた「銘々伝」があります。江戸時代から国民的人気のある話ですから、「銘々伝」は増え続ける一方。

作家の創作意欲を、よほど刺激するんでしょうね。

今回の5題は、すべて「銘々伝」です。

「素麺を煮る内蔵助」は、「鬼平」で有名な池波正太郎さんの原作です。「岡野金右衛門の恋」は、大西信行さんの原作です。

その他には、定番「南部坂の別れ」もありました。討ち入りを明日に控えた内蔵助が、亡き主君・浅野内匠頭の奥方に四十七士の血判状を渡す物語。

南部坂は、広尾の有栖川公園にありますから、ここを散歩するたびに「別れ」を思い出す。



さて僕のお目当ては、今回「赤垣源蔵 徳利の別れ」を演った国本武春兄さんでした。なんとも古くさそうな浪曲を、敷居を低くして「おもしろいでしょ?」と誘った人。

出会いは、現代風にアレンジした曲から。その後、しばらくは錦糸町や下北沢へ追っかけをやってました。

観客を巻き込んで、かけ声の掛け方や唱和を盛り上げる。

文化庁に選ばれて、1年間外国に遣されたこともある兄さん。

三味線ばかりでなく、あらゆる弦楽器に手を染めて、ますますレパートリーを増やし、お笑いにも磨きをかけました。

今回は「正調の」浪曲です。赤垣源蔵が、明日の討ち入りを胸に、実兄に別れの盃を交わそうとするが、あいにくの留守。そこで、兄の紋付と対面して献杯する物語。

兄弟の、ちょっといい話。いや、だいぶいい話。

国立演芸場を出る前に、1階の資料室に寄り「怪談」をテーマにした展示を堪能し、また夏に逆戻りしました。

外は、まだまだネットリ。