奇しくも、あの戦争2タイトル
本日が池袋の映画館・新文芸座で開催されていた「追悼・原田芳雄」の最終日でしたから、あわてて出掛けました。9月17日から始まっていましたが、清里にいて「ほぼ全滅」でした。
最後の一日だけ、やっと間に合いました。
映画ばかりでなく、ゆかりの監督や俳優もトークで出演していたぶんもあったので、それも含めて「ほぼ全滅」です。名画座はどこも、こういう企画をよくやるので、ほんとに残念。
新文芸座は、都内に残る名画座の中で、未だに名画座らしい雰囲気があって好きです。
立地の周辺があやしいところが、まず得点高し。パチンコ屋の3階というのも好ましい。そして、座席数が少なく、座席自体が汗臭いのも、気分が出ます。上映している映画の解説パネルの手作り感も泣けます。
つまり、落魄感がいいんです。
分煙施設や映画書籍の書架は、従って、僕には「山の手」っぽくて好きじゃない。
依然として落語の会も行われています。次男坊と見に行った時は、映画の音響施設ですから、声が吸収されて違和感がありました。「営業努力」しないでも、充分ファンはいると思うのですが。
さて、肝心の映画。「父と暮せば」と「美しい夏 キリシマ」。どちらも「竜馬暗殺」を撮った、黒木和雄監督です。
「父と暮せば」は、ご存知井上ひさしさんの戯曲です。出演は宮沢りえちゃんと、父親役に原田芳雄さん。恋人役に浅野忠信さん。
井上ひさしさんの工夫は、父親が生きている人間ではなく、幻であるところ。原爆で生き残った娘の呵責を際立たせるために、父親は死者として登場する。
設定がうまいですねぇ。
井上さんが信じるユートピアの舞台だと感じました。
りえちゃんの広島弁は、ぎこちないですが、「可愛さは七難かくす」ので耐えられます。モンペ姿は、足が長いのでミラノファッションみたいでした。
両男優、実にうまい。
「美しい夏 キリシマ」は、監督が実体験から創作した映画でした。解説パネルを読んでわかりました。
監督は、死ぬ前にどうしても撮りたかったのだろうと推察しました。柄本佑君が演じた主人公・康夫の目は、戦後を生きて来て「振り返った時」の監督の目だったのでしょう。
つまり、監督の当時の目ではなく。当時の目であったとしたら、相当、強靭な精神を持った少年です。
そして、原田芳雄さんは少年の祖父の役。
遺作となった「大鹿村騒動記」でみせたオトボケが光るだけに、兄さんにはもっと生きて、三国連太郎さんのようになってほしかった。
息子の原田喧太さんが「週刊現代」でインタビューを受け手ました。青年期に家出をし、7月19日の臨終にかすかに間に合わなかった彼。
でもアルバムタイトル「心/音」のロゴは、お父さんが筆をとったものでした。
長野県の大鹿村、僕はなんとなく縁を感じてます。
次回、清里に行ったら、ちょっと足を伸ばして一泊しようと計画しています。そして、原田芳雄兄さんの最後のセリフとなった「あれ?」って言ってみたい。みたいんです。
★それでは「音だっち」ツネツネから。大鹿村の空を眺めながら、この曲を聴くのもいいですねぇ。
・本日のおすすめ。仏のシンガーTETEです。