伝説の人を見ました
「彼女は、まだ生きてるんですか?」と、チケットのもぎりの人に思わず訊いてしまいました。マイヤ・プリセツカヤのこと。
カリスマやセレブや伝説の人が、ギャラ3万円でTV出演する現代に、誰もが認める「伝説の人」は、「たぶん、生きていると思いますよ」と。
帰宅して調べたら、「1925年11月20日 - 」とあるので、彼女は幸い存命中。しばしば現代最高のバレリーナと呼ばれるロシアのバレエダンサー。
その知名度だけで、一体どんな人なのかと映画「アンナ・カレーニナ」を見る。
トルストイの高名な小説は、例によって読んでません。
政府高官の妻・アンナが、青年将校と道ならぬ恋に落ちる。離婚を決意するが、夫にその気はさらさらない。いろいろあって、ありすぎて、恋人にも絶望し、彼女は列車に身を投げる。
だいたいの粗筋だけはわかってましたが、見るからに厚い本ですから、いろいろあったことをどのようにバレエ化するのか? バレエ化できるのか? その興味。
映画の始まりは、雪の降るモスクワ駅。2人の出会いのシーンから。
恋が始まる瞬間は、ただ目が合えばいい。これは現代も一緒。
バレエは言葉を使わない身体表現です。音楽のチカラを借りてますが、体で感情表現する。
それで観客に意味が伝わるのですから、人間は本来は動物なんでしょう。ああ、それなのに、言葉依存症。
つまり、バレエ化できるのか? という疑問、僕でもわかるのか? という不安はなかったということです。
チラシを見たら、時代設定は1870年代の帝政ロシア。ロマノフ王朝はレーニンの革命と対比で語られるので、「消える絢爛さ」が好きです。
舞踏会や競馬場での社交。
最新のモードで、空虚なおしゃべりをし、飽食して時間をやり過ごす。誰もが知りたがる、誰かの不品行。
マイヤが舞ったアンナは、品格があって、苦しみがあって、なにより、美しい。アンナの決定版。
彼女に比べれば「準」伝説のダンサー、アレクサンドル・ゴドゥノフは、いかにも血筋のいい将校貴族らしく「決断できない男」を演じてました。
さて、本日の写真。
映画は地下鉄・新富町の近くにある「銀座ブロッサムホール」で上映。
早めに着いたので、サンドウィッチでも買おうと周辺散歩していたら、札に「金子國義さんへ」と書かれた花束を発見。
ギャラリーでした。MEGUMI OGITA GALLERY。階段を降りて、彼の作品を一巡鑑賞。
1936年生まれで、デビュー当時から変わらぬ若さあふれる「お耽美」。原画を見たい方は、急いで足を運んだほうがいいですよ。
言葉で表現できないから、舞踏や絵画は生まれる。