思いがけなく、手に入る百両

邦楽のすべては、落語から始まりました。噺家が高座に上がる時に鳴る、出囃子。なんとも、調子がいい。

これがないと、場が、水を含んだ綿のようにしんなりとしてしまうでしょう。

そして、噺の中に出て来る邦楽の名前。

長唄、小唄、端唄、地唄

義太夫常磐津、清元、新内。

知ろうとすると、楽器の名前やチューニングの名前、伝統芸能のジャンル、演者の役割分担、流派と、とめどがない。

CDを聴いても聴いても、ライナーノーツの解説がわからない悲しさ。

邦楽をわかろうとすると、どうしても能・狂言、そしてなにより歌舞伎に向き合わなければなりません。

古語や日本史とも付き合わなければいけませんから、ツライものがありますよ、これは。

渋谷を散歩していたら、町内掲示板に「伝統文化講座 江戸の芸能を知る」と張り出されていました。

今までは、法政大学の田中優子女史など、知識としての講座にはいろいろ参加していたんです。今回は、常磐津体験もするというので、触手が動きました。

講師は、聖学院大学鈴木英一常磐津 和英太夫)先生。12月まで7回あります。



第1回目のテーマは「歌舞伎鑑賞入門」。

前半は、歌舞伎音楽についての概要。

所作事(しょさごと)、つまり踊り主体の舞台がある。地狂言、これは所作事以外の舞台。

演奏者に支払うギャラは、1本の演題数十日分まとめての場合と、1曲単位のケースがある。

「それでは、有名な三人吉三(さんにんきちざ)の名台詞を皆で言ってみましょう」と始まった後半。

月もおぼろに白魚の

かがりもかすむ春の空

冷てえ風もほろ酔いに

〜〜〜

こいつぁ春から縁起がいいわぇ。

菊五郎丈のDVDを見ながら、受講者60人で唱和。寺子屋みたい。

七五調ですから、ノリはいいです。ですが一本調子ではありません。

やはり、落語で江戸言葉になじんでましたから、言い回しには苦労なし。

そして、講座修了真近に「仲間の鳥羽屋文五郎さんのチケットを差し上げます」と先生が言ったので、早速挙手。



「本日は、景清(かげきよ)をテーマにまとめてみました」と、3曲を文五郎さん自身がアナウンス。

「五條坂景清」「壇浦兜軍記」「新曲 日向島」。

「景清」は、能や歌舞伎の代表的な演目とは知りながら、例によって、内容はまるで不案内。

早稲田大学演劇博物館の館長・竹本幹夫教授が登壇し、全体像を説明してくれたので、おおよそ理解。

加えて安堵したのが、曲の字幕です。

よくミュージカルで、舞台の両脇に日本語字幕がでるでしょ? あれと同じ。

趣向がちょっと違って、衣紋掛けに茶色の無地の着物を垂らし、そこに唄の詞を投影する。わかりやす〜ぃ。

おしなべて邦楽の唄は、詞の母音の調子が重要です。これで、何を、どこを唄っているのかがわかる。

字幕を目で追いながら、とうとう歌舞伎のサウンド・トラックをナマで聴く僕だった。出世したなぁ。

★それでは「音だっち」ツネツネから。ロシアの音も、ソ連から出世したなぁ。

・本日のおすすめ。ロシアから。Cheese People
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