ギエムが、勝ち気な人妻を踊る

10月31日で世界人口が70億人になったニュースは聞きましたか? 

国連人口基金では、31日に誕生した赤ちゃん全員を「70億人目」と認定し、東京事務所では希望者に認定証を発行するそうです。

こういうの、もらっておくと後々自慢できそうだよね。

で、その赤ちゃんに関連してなんですが、「お坊さんも婚活」っていう楽しいニュースもありました。

後継者が決まっていない日本の寺院は約40%もあり、なり手がいない。

そこで各宗派、僧籍をもっているお坊さんは出会いを求めて、高層ホテルでアルコール・食事付きの無料婚活パーティに参加。

ところがどっこい、女性の考えてることは身も蓋もない。

「会社と違い、リストラがなくて安定している。幼稚園などを経営していれば、経済的にラク」ですと。

つらい修業を幾星霜してきたお坊さんの顔が見てみたい。

ま、婚活は下心が開き直っていますから、言われてため息が出たお坊さんは修業が足りない。



「婚活みたいに赤裸々なのは、ちょっと」という向きにお薦めできるとひらめいたのが、上野駅前の東京文化会館のロビー。

50年前に開館した時、僕は中学1年生。先生に引率され、全校生徒は上野公園を徒歩で縦断してクラシック鑑賞に向かいました。

生クラシック初体験の内、「アルルの女」だけは体に入ってきました。

成人後は、敬愛する前川国男さんが設計した建築として、上野に行った時はたびたび立ち寄り、眺めていました。

2回目とはいえ、事実上初めての東京文化会館。50年後の今回はバレエのシルヴィ・ギエム鑑賞。

開演まで時間があったので、ロビーをじっくり鑑賞しました。「こんな設備あったかなぁ」と、往事と比較しても思い出せません。

天井のライト、こんなにきらびやかだったかなぁ。

スタッフ、こんなに心地よい笑顔だったかなぁ。

レストラン、こんなに上流だったかなぁ。

クローク、前からあったかなぁ。

座席案内板、こんなにお洒落だったかなぁ。

カップルは、おしなべてお上品で「婚活みたいに赤裸々なのは、ちょっと」志向が多いと読みました。



はい、お待たせしましたシルヴィ・ギエムボレロで有名ですね? ジュリエット・ビノシュ似だから、1回本人を見てみたかった。

本人が出たのは「『マノン』より第一幕(寝室)のパ・ド・ドゥ」と、「田園の出来事」。

僕は勘違いしてました。

ボレロの印象があまりに強くて、彼女は、ある種前衛的なバレエを踊る人だと思い込んでいたのです。

ところが、2つともストーリー性のあるバレエ、つまり演劇的なものでした。プログラムを理解しないで切符を買ったとまどいです。

え? と思ってチラシを読んだら、ツリゲーネフの戯曲のバレエ化でした。

若くはないとわかっていながら、勝ち気で奔放な美しい人妻が、息子の家庭教師にこがれる物語。

肝心の、彼女の顔がよく見えない。もうちょっと奮発して、いい席を買えばよかったなぁ。

本日、僕は64回目の誕生日。来年はどなたかS席をプレゼントしてください。お茶、出します。お菓子も付けます。