文字東久(もじとく)さんの講義

しばらく金曜日は渋谷区の「歌舞伎鑑賞入門と常磐津体験」講座に通います。たぶん、行けない時もあるけど。

第2回目のテーマは「三味線鑑賞入門」。講師は、常磐津文字東久(ときわず もじとく)女史。

前に、法政大学の田中優子教授から「三味線の音は、女性のよがり声なんです」と聞いて、さすが、言うことが大胆だとファンになりました。

教授は学者なんかとっとと廃業して、「お茶屋のやり手」に転職してほしいんだけど。通いますよ、僕。

さて、文字東久さんの用意したパンフ「三味線の木」で、永年の疑問が氷解しました。

まず、大きく「語りもの」と「 歌いもの」に分かれる。

「語りもの」は、古い順に説教節から河東節と義太夫に分かれる。義太夫がやがて一中節を生み、豊後節を生む。さらに義太夫常磐津と新内と宮圜節を生む。

常磐津だけは、さらに富本、続いて清元、浪曲へ分かれていく。

付いてこれます?

一方、「歌いもの」は、まず、長唄長唄の周辺に大薩摩、外記節、萩江節がある。

長唄が主に劇場の音であるのに対し、お座敷の芸として都々逸、小唄、端唄など指でつまびく音が生まれる。

落語の噺の中で出て来る「○○のお師匠さん、○○の稽古」がすべて出てきました。ああ、ツリー構造がわかってスッキリ。

だいたい、1700年代の元禄期から、1800年代の文化文政期にかけて、邦楽は出そろったんですねぇ。

とはいえ、それぞれがどんな音なのか理解するのは別問題。



次に、三味線の話。

棹は3種類。細いのが長唄。他に太棹と中棹。常磐津は中棹を使う。

先端に付いている3本の糸巻きも、長唄は白(写真参照)で、常磐津は黒。これだけ知っとけば、通を気取れる。

胴の皮に猫を使うのは知られてますね。猫も、華奢な家猫でなく、野良猫のほうが皮が丈夫で長持ち、って「わかるなぁ」。

当日、文字東久さんが持参した三味線。表の皮をたたくと高音が出て、裏の皮をたたくと低音が出る。

「表は最近張り替えました。裏はそのままですから、張りがなくなって低音なんです」。

胴の回りは、カリンやケヤキの堅い木。持つと、想像以上に重いです。

ちなみに、プロが使う三味線の値段。

稽古用で8万円以上。犬の皮もあるそうです。そして、本番用は50万から300万円。

三味線はバイオリンなどと違って、消耗品だそうです。買い替えるのも一財産いります。



「それでは、一中節と常磐津の違いをやってみましょう」と、「羽衣」で同じ詞のところを演じる。

なるほどねぇ、一中節のほうが歴史が古いので、基本的・大らか・どっしり感・土着的。

対して常磐津は、装飾的・技巧的・メロディに幅があり、お金を払って聴く音楽のようでした。

NHK2チャンネルで、坂本龍一さんの音楽教室「スコラ」を見た時と同印象。20世紀初頭のラベル・ドビッシー・サティの音は、バッハやベートーベンの音に比べて、より自由に軽快になった。

それが、音の進化ということなのかぁ。

今まで、歌舞伎の音はすべて長唄と思い込んでいました。各種の邦楽も活躍していたんですね。やっと入り口に立った気がしました。

★それでは「音だっち」ツネツネから。邦楽話に眠たかった方々。眠気を飛ばしましょう。

・本日のおすすめ。DEEP PURPLEです。曲名は知らずともこのイントロは聴いたことがあるのでは?

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