塩野七生さんの友だち映画

今年は、イタリア統一150周年だそうです。

そういえば、ローマ帝国の印象が強過ぎて、「何を今さら『統一』なのか?」と、高校の世界史の授業中に驚きました。

加えて、ニーノ・ロータ生誕100周年。これは、イタリア文化会館のチラシから。ゴッド・ファーザー曲の父は、岡本太郎巨匠と同学年でした。

映画を見ようと訪問したら、「ウフィツィ・ヴァーチャル・ミュージアム展」が1階ホールでやっていたので立ち寄る。

超で高で細で密なるデジタル技術で再現された、イタリアの名画。ほんとに、イタリアに行かなくてもいいのでは、と目を見張る超高細密画。

有名な「ヴィーナス誕生」。原寸展示を前にして、自分の矮小さに恥ずかしくなりました。石造りの建築を彩る、堂々とした構図、押し出しの強い肉体。

かないません。

写真右も、有名な「受胎告知」。レオナルド・ダ・ビンチが20歳前後に描いたと解説文。こちらも、ひたすら感心するばかり。

1472〜75年とあります。現在も、これほど色が鮮やかなのでしょうか? デジタルで補正してないの?

それにしても、この感情表現のうまさ。後世の画家は、コンプレックスを持たないの?

Luthy嬢は、会館職員です。

「この、マリオ・モニチェッリ監督は、どんな映画を撮った人なんですか?」

笑って、上映会の案内書や、監督の語録をまとめた本を差し出す。イタリアンコメディを60本以上作った人。

「シオノナナミさんの、トモダチね」と、また微笑む。会のために塩野七生さんは講演もしたそうです。いや、見たかったなぁ。

3日間に計5本上映された中で、僕は「わが友だち」を見ました。

「主演のウーゴ・トニャッツィは、有名な人?」とLuthy嬢に質問。「とってもユウメイ。ニホンのヤクショ・コウジさんみたい」。

中年の仲良し5人組が、肩の力の抜けた毎日を送る。要約すればですが、要約してもしょうがない類いの映画。つまり、日常を語っているので。

日常には、鮮明な対比や陰影や主題や事件ってあまりないでしょ? そういえば、ありすぎるベルルスコーニ御大は、今頃、何しているのでしょうね。

日を変えて、また行きました。今回は、同じ映画でも無声映画。それに、スピノザ嬢とカルカニーレの2人がピアノ連弾で曲をつける。

弁士が登場して、説明やセリフを言うことはありません。

アメリカの無声映画は何回か見てましたが、イタリアのは初めて。

リュミエール兄弟が、世界初の実写映画を公開したのが1895年「工場の出口」。

「こりゃおもしろい」と、またたく間に世界に広がって、今回見るのは1910年「アニタガリバルディ」と、1915年「クオーレ」。映画黎明期のイタリア版です。

ガリバルディって、聞いたことあるでしょ? イタリアを統一した男。アニタは彼と恋に落ち、結婚し、闘い、疲労困憊して農家で死ぬ。

曲は「オペラ数曲をアレンジして」いるらしいのですが、僕はナブッコ以外は不明でした。

「クオーレ」は、スピノザ嬢のオリジナル曲。

映画黎明期は、脚本に苦労したのでしょう。そこで、昔からなじみの、誰もが知っている本を原作にストーリーが作られた。「クオーレ」も、イタリア人には桃太郎のような話だそうです。

任務に忠実な少年兵の最後やあわれ、とか、生活のために父の仕事を助ける少年の災難と和解がテーマでした。

道徳の教科書のようなストーリーですが、ピアノの音で救われました。

この催しは、ミラノで現在開催中の無声映画会の一環だそうで、いずれにしても本国では統一150周年を盛大に祝っているのでしょうね。