やかましさも過ぎれば眠たくなる

11月中旬まで渋谷でやっていた、王兵監督の映画は見ましたか?

ワン・ビン全作一挙上映」とあり、こりゃ行かねばなるまいと楽しみでした。

今どき、1本が500分・400分の映画を撮る人はいませんから。長尺映画で記憶があった人。大鑑巨砲主義で、なんとなく時代に逆行して挑戦的でしょ?

で、行かれた方は、どう思いました?

僕は、途中で眠りました。

見たのは「鉄西区」。の1部「工場」です。これだけで240分あります。ちなみに2部「街」175分。3部「鉄路」130分。合計で545分。

鉄西区」は、中国東北部瀋陽にある製錬所のドキュメンタリー。時は1999〜2001年。

日本が満州を侵略した時代に建設された工場が、戦後、大規模な工業地帯に変わり、国有企業が一斉に末期を迎えた時期。

それから10年で日本の経済規模を追い越した中国。



でも当時、マーケット無視の「親方五星紅旗」国有企業はどれも、巨大であるがゆえに、ひたひたと寄せる採算性に進退きわまっていたのです。

監督は、ひたすら現場労働者を追う。上司というものが出てきません。基本、女が出てきません。家庭も出てきません。休息も、睡眠も。

出て来るのは労働と職場にある風呂場。着替えて、フルチンになって長い廊下を通って風呂場へ歩く。これで240分。

なぜか、落語の「あたま山」を思い出してました。

自分の頭に木が生えてくる話。突然芽が出てきて、水をやり、丹精込めて育てる。

皆が見に来るので、頭の上がうるさくてしょうがない。ウワンウワンしてしょうがない。

実際、僕は上海と北京を旅したことがあります。あの途方も無さは、おおらかさとかとは対極の、ハリケーンのような騒擾の地平があります。

「停滞の帝国」大野英二郎著。これは、18〜19世紀の西洋が見た中国像。西洋は、中国を発見してから、礼賛したりコケにしたりを繰り返します。

自分達の世界観に取り込もうとしますが、いつも、そこからはみ出す中国。好奇と同情の目、啓蒙すれど混沌に巻き込まれる。

なんだか、現在もその残照がありませんかねぇ。

直近のアメリカの上院軍事委員会報告。

米軍の調達部品に、新品と偽った電子部品が100万個以上混入していた。その7割が中国製だった、と。70万個といえば、雨滴に匹敵するボリュームです。かないません。

とはいえ、ホッとするニュースもありました。

一人っ子政策で、軍隊に就職する若者が減ったこと。そのため、人民解放軍は、入隊基準を緩めた。

ピアスの穴、1つならOK。顔や首の入れ墨も直径2cm以内ならOK。多少、肥満気味でもOK。

うれしいじゃありませんか、この妥協策。強権発動は相変わらずですが、蠢動する人民にピリピリもしている様子がうかがえます。

★それでは「音だっち」ツネツネから。濃淡はあるでしょうが、個人が個人で生きられたら幸せだよね。

・本日のおすすめ。映画『北京バイオリン』より。

・クライマックスで、主人公が誰のためでもない自分のためにチャイコフスキーのバイオリンコンチェルトを弾くシーンです。映画もおすすめですので是非。

[http://www.youtube.com/watch?v=yO28Ck1193w:title=http://www.youtube.com/watch?v=yO28Ck1193w
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