未練は、終世続くことでしょう
まずは、曳航する波を見てください。正面奥にあるのが永代橋。本当は、動画のほうが気分が出るのですが。曲は、サラ・ブライトマンの「さよならを言う時」です。
聴きながら、僕の好きな草森紳一さんの話。
隅田川の数ある橋の中、優美さで一番の永代橋のたもとで、2008年3月のたぶん19日まで暮らしていた草森さん。あれから3年余。天国で崩れそうな本の山脈にかこまれて、読書と執筆をしていることでしょう。
今も、僕の中で彼は生きているので、未発表原稿が発見されて本になる度に、読んでます。買ったり、図書館から借りたり。
これからも、続々、刊行されることでしょう。
彼は、表向き独身でした。出版社からの原稿締め切り電話に出ず、もしやとかけつけたら、横臥していたのです。ですから、推測19日永眠。
「俺は人非人だよ」と、よく言ってました。それほど、本に耽溺した人。300の関心事を持ち、関心事1件につき200冊ほど読んでから、執筆にかかる。
哲学、歴史、ファッション、美術、デザイン、写真、広告、マンガ、書、中国、建築、評伝を、万年床で書く。
「草森紳一が、いた。」は、<草森紳一回想集を作る会>が発行所です。生前、彼と交誼のあった人々の回想が545ページ分にわたって延々と続きます。
内、中山千夏嬢の寄稿文。風貌は仙人のようだけど、修業の残滓が少しもなく、妖精だった、と。人間離れしていたにちがいない。
会は、遺された蔵書3万1618冊を整理し、目録を作り、寄贈先を探すために2008年9月30日に結成されました。
そして、目録完成が2009年4月26日。11月には帯広大谷短期大学と佐賀県立美術館に寄贈決定。
会が活動中であることは、親しい古本屋さんから聞いて知っていました。読んで、やっと実体がつかめて、何だか安堵。
装幀に使われた写真は、彼が撮った永代橋。
こよなく写真を愛した彼は、散歩がてら、よく読書中の人々を撮影していました。僕も、彼にならって、読書人をよく撮ります。
これは、夏に原宿で撮りました。老若男女、読んでいる人を見かけると、草森さんを思い出して、愛おしくなり涙ぐむ。