あのビルが、ほんとに無くなるんだ

皆さんは、買った薬を最後まで呑んだことがありますか?

数年前に買った風邪薬「ルルアタック」、とうとう最後の一錠まで呑んで、ちょっと感激したなぁ。いつも、途中でどこかにほったらかし。

そもそも、やり切る、ということがない生活習慣なので。

新たに、「ユンケル黄帝 顆粒」と「アルペン ゴールド カプセル」を呑み始める。風邪も、直りかけですが、なんだか不安でね。

10日から、世の中の大勢は「今年こそ」と、キリリとなっているのに、寝込んで部屋に引きこもりが続く。

「今頃、あのビルもだいぶ解体が進んだろうねぇ」。なにしろ、1月5日から工事が始まっていると言ってたから。

12月23日の夜6時から、僕は84年前に建てられた「九段下ビル」にいました。

去年9月に部分解体が始まり、中断し、今年1月からは本格的に取り壊される。中断期に、内部を見られる最後の機会。

最終住民、画家の大西信之さんが企画したイベント「さよなら九段下ビル」です。

「マスコミは老朽化とか耐震性とか言ってますが、まったく違います。地上げで、新しいビルを建てるためです」と、歯切れがいい。

「9月までは、喫茶店などのテナントが残っていました。ところが、工事が始まると騒音と振動で営業ができず、それで引っ越していったんです」。悔しさがにじむ話を30分。

かつて、2階に3年住んでいた漫画家の一色登希彦さんも登場。

「仕事上、小学館の近くで、しかも住みたい場所は、ここしかなかった」と回顧する。

とはいえ、部屋はとんでもなく冬寒く、夏は暑い。

「漫画を描く時、パターン柄がシールになっているスクリントーンを使います。シール裏の糊が溶けるほどの暑さって、想像できますか?」。

同居人だった頃、一色さんは大西さんが描いた九段下ビルの絵を購入し、今回、それも持参して30分。

キャンバス右下のサイン、"9 step's hill building"の画題に笑う。

同時開催されたいたのが、アーティストたちの展覧会でした。

芸大生8人は、大西さんの呼びかけで作品展を開く。うれしいねぇ、ほこりと、亀裂と、剥落の内部を活用した若者がいるのは。

気に入ったのは、田中一平さん作「Fade Out Machine」。天井から斜めに降りて来た金属棒が、回転している。先にブラシが付いていて、波のある同心円を描く。

足跡を付けても、1回転して、跡形もなくさらう。

「積み重ねて来た年月と、消される建築」がテーマの作品。レイラ・ハサウェイですねぇ。