初春のにぎわいは、奴凧に乗って
もう、うかうかしてたら15日ですよ、お客さん。1月も半分終了。あと、いくつ寝るとお正月。
10日に「新年は、もう始まった。働かなければならない」と、ロシアのプーチン首相が、休暇で会議を欠席したキーロフ州知事を一喝したニュースに、僕は首をすくめる。
あ〜、こわ。
切符を見たら、10日は国立劇場に行ってたんですねぇ。去年秋から月1回通ってますから、だいぶ場にも慣れました。
初春歌舞伎は、初体験。いやぁ、お正月の華やぎが劇場全体にあふれていて、気持ちが温かくなる。
今年は国立劇場の他、新橋演舞場で菊五郎、浅草公会堂で亀治郎、ルテアトル銀座で玉三郎、平成中村座で勘三郎と5座で幕が開きました。
そういえば、東銀座の歌舞伎座は、まだ建築中なんですね。
席は、いつもと同じ2等B、3階です。ちょっと空席が目立つ。カメラの入ったバッグ、ダウンジャケット、マフラー、帽子、手袋をとると、座るスペースが無いほど狭い。
そこで一計。
国立劇場の観客席の構造は、2階と3階が分離せず、階段でつながっているのです。
ということで、荷物は自席に置いて、ちょい前の空席に移動する。いずれにしても舞台を俯瞰しています。幕が開き、手前の大川の波模様が一面に広がり、なんて鮮やかなんでしょう。
今回は「三人吉三巴白浪(さんにんきちさ ともえのしらなみ)」と「奴凧廓春風(やっこだこ さとのはるかぜ)」。
「月もおぼろに、白魚の〜こいつは春から縁起がいいわい」でおなじみの「三人吉三巴白浪」。
盗賊が主役の「白浪もの」は楽しい。河竹黙阿弥作の七五調の台詞が、ワルをグリグリとえぐるように強調する。
序幕で、お嬢吉三が強請った百両。その現場を見ていたお坊吉三が「待てと言ったら、待ちなせいな」と登場。
2人が刀を抜くと、花道から登場する和尚吉三。「高麗屋!」と、声が飛ぶ。
金は天下の回りもの。百両は持ち主を次々と変え、新しい事件が起き、3人が仇になってしまう因果。
花道は通常、舞台下手側に付いてます。今回は上手側にもあって、2本の花道とは珍しい。これも初春ならではの舞台でしょうか。
「奴凧廓春風」は、幸四郎、染五郎に加えて、金太郎と3代そろった舞台でした。
こちらも、河竹黙阿弥作。彼の絶筆の舞台だそうです。
空に舞い上がる奴凧は、染五郎さんがワイヤーで踊る。自身の振り付け。
不思議ですねぇ、ほんとに風を受けているように感じる。フワフワ、クルクル、ワゥワゥと、全身で舞います。
ああ、お正月はめでたい。
舞台と両花道から、出演俳優がそろって手拭いをまく。うれしい新年の挨拶でした。もちろん、2・3階には届きませんでしたが晴れ晴れします。