ブリューゲルの農民は、ほどを知らない

土曜日は7chで「美の巨人」、日曜日は1chで「日曜美術館」。BSに入っていないので、美術番組は2つしか見られません。

演出は違いますが、どちらも立ち止まって、どういう絵なのか、どういう人なのか、わかって楽しい。

新年の「美の巨人」は、2週連続でミケランジェロを取り上げ、システィナ礼拝堂のフレスコ画でしたね。

バチカンに出掛けたら、望遠鏡を手に1週間ほど通い詰めたい美術史のメインストリーム。

彫刻のダビデ像ピエタ像も写真でしか見たことがないので、こちらも3日ばかり見続けたい。

天井画の発注者・ユリウス2世とのやりとりを描いた映画「苦悩と歓喜」を見たのは、僕が高校時代でした。チャールトン・ヘストン主演。

彫刻家から画家になるだけで、まず、想像できない。

天井を下方から描くのだから、姿勢に無理がある。

なんてのは、初期段階の苦労で、その天井も湾曲しているから、地上から見上げた時に、不自然にならないように、人体の比率を変える短縮法を発見する。

あるいは、近景は濃く、遠景を薄く描く空気遠近法。梁や柱も書き込んで、宗教建築であることを強調する。

チャイコフスキーの「偉大な芸術家の思い出」再び。

と、ここで去年見た映画「ブリューゲルの動く絵」も思い出す。

バベルの塔」で有名なブリューゲル

僕は、なんとも騒がしく、あるいは、間抜けなことをやっている人々を描いた「謝肉祭と四旬節の喧嘩」とか「怠け者の天国」が好きです。

画題「十字架を担うキリスト」、映画の原題はThe Mill & The Cross製粉所と十字架。

彼も宗教画を描いていたんですねぇ。

近景は、大地で繰り広げられる人々の営み。遠景は、山並から空へと、おなじみの構図。

絵に描かれた広大さを、CGを使って再現してました。それはすごいのですが、むしろ、画家が何を見て、何を思ったか、その演出にうなりました。

ほとんど、台詞なし。音が無い絵画を扱ったからでしょうか。

木を伐る音、回る馬車の車輪、虫の羽音、赤ん坊の寝息、ムチのしなる音、バンを噛む音、ベッドがきしむ音、歯車の回る音。

生活の音は、土俗・習俗を強調しているのです。実は因習でもある。

その因習が人間の闇を作るのだ、と重い十字架を担いで歩き、まさに磷付直前のキリストの絵が語る。手前には、祈るマリア像。

こういうふうに読み解かれると、キリスト教に縁のない僕でも、群像を理解できる。

2月3日まで上映してます。

最近、「聖マルティンのワイン祭り」が世紀の大発見と話題になってます。こちらは例によって、僕の好きな連中が満載。

寝そべっている奴、松葉杖ついてる奴、横取りする奴、押しつぶされる奴、もっとくれと叫ぶ奴、のけぞる奴、喧嘩する奴、大木につかまる奴。

欲望全開で、楽しい。