新しい場所は、昔から不安でいっぱい
残り物には、福がある。
図書館が廃棄したリサイクル本の中から、「メディアの権力」ハルバースタム著を見つけました。
発行元のサイマル出版会は、1970〜80年代に輝いてました。
ちょうど、現在の中国のように経済の鼻息が荒く、人々がこぞって海外旅行に出掛けた時代に、外国をテーマにした本を連発してましたので。
ということは、僕も目先のことばかりで、読みたい本をほとんど置き去りにしてきた、ということ。
表紙に描かれた、ディビッド・ハルバースタムさんの顔を見た時の気分は、COVAの曲のようにウキウキ。
ご存知、ベトナム戦争時のアメリカ首脳を著いた「ベスト・アンド・ブライテスト」でピューリツァー賞を受賞した彼。
テレビ業界から、CBS。新聞業界から、LAタイムズとワシントン・ポスト。雑誌業界からタイム・ライフ。アメリカを代表するメディアの生成を読む。
どの社も、創業者が帝王と呼ばれた人々ですから、事業発展をして権力を握って行く過程がダイナミック。と共に、彼らの野心が、実に傷つきやすいものかを描く。
まるで、読者がその場を見たかのように。
1936年創刊した写真雑誌のライフは、すでに廃刊して久しいです。テレビに駆逐されました。
タイムとフォーチュンとスポーツ・イラストレイテッドは、まだありますね。
ライフは時代の証言者のようで、バックナンバーを90年代に大量に買いました。
ですから、創刊したヘンリー・ルースの項は、特に熱を入れて読んでます。
仕事の虫で、奇矯な人。中国生まれの、共和党支持者。
ライフ創刊号は、ルーズベルト大統領のニューディール政策で作られたフーバーダムの写真が表紙を飾りました。
撮った人はマーガレット・バークホワイト。マーガレットというくらいですから女性です。
それを知った時は、驚きました。アメリカにはすでに女流カメラマンがいたこと。彼女は子供や花を撮らずに、町や工場や労働者を撮っていたこと。
以来、信奉者になりました。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカの話になってますね?
わるいねぇ、古い話につきあってくれる?
これは、1905年にニューヨーク・エリス島に到着したイタリア人家族たち。移民です。
こちらも、僕の信奉者。ルイス・ハインの写真です。バークホワイトともども「写真の読み方」イアン・ジェフリー著から。
故郷を離れ、新天地に着いた家族。
どこかに行ってしまった荷物をこれから探さなければいけない母。迷子にならないよう妹をつかまえている兄。職員の怒号が聴こえてきそうです。
彼は、不安と絶望と警戒の顔に寄り添った。レンズの姿勢は大事だよね。
ハインは、エンパイアステートビルの建築現場の写真もたくさん撮りました。
その場の、その一瞬。撮りたい写真ですが、なかなか腰が重くて実現できません。