論じることより、やってみたくなった
区立図書館は、基本が開架式ですから、思ってもみなかった本に出会えていいですよね?
だって、ドラキュラの本を、唐突に思いつき、ネットで検索し、注文し、読んでみようとなりますか?
でも、開架式なら現物が目の前にあるのですから、ピンときて、あとは「貸してください」だけ。
ご存知、ブラム・ストーカー原作の「ドラキュラ」小峰書店刊。吸血鬼のストーリーを再構成し、絵を加えた。ほとんど、絵本といっていい。
ブリュチさん、1967年生まれのフランスのバンド・デシネ作家。バンドは帯、デシネはデッサン。つまり、続きものの絵→漫画。平たくいえば、漫画家です。
一枚もののイラストも描きます。
都会的で、不条理で、暗黒で、激しくて、切り裂くようなタッチが、ドラキュラのストーリーにぴったり。
想像力がなければ描けないイラスト。ガラスを引っ掻いた音が聴こえてくるような、タテの描線。神経が持ちこたえられない、しびれ。
何回も眺める。
アメリカの雑誌「ザ・ニューヨーカー」にも寄稿しているというから、他の絵も見たいよね。
悪寒のするブリュチさんの絵も好きですが、一方、クートラスさんのアンバーな色調の絵も好き。
「クートラスの思い出」岸真理子・モリア著。
広告や書評欄ではなく、文化紹介をするような記事で読み、入手しました。出版社はリトル・モアですから、期待も高まる。
本文はもちろんですが、やはり、彼の遺したデッサンと作品を見入る。
まず、6000枚を超えるカルト。カードです。これがいい。30歳を過ぎて住所不定・無職になり、極貧生活でボール紙に描き始めたカルト。
売るための絵を描くことに違和感があった彼が、孤独のなかで慰めを見つけた絵は、どれも、象徴的なシンボルに見える。
絵だけではありません。テラコッタも焼きました。
パリ市南部、モンマルトル近くのヴォージラール通り226番地のアパートにある顔の焼き物。
「僕の作品は生き物なんだ。僕が出掛けた途端に、奴らはにぎやかにお祭り騒ぎをしてるさ」。人からもらったり、買ったりした人形に、同じような想像をしてニンマリしていた僕は、初めて友だちに会えた気分。
彼との共通点。
小さい物好き、たくさんあるのが好き、くすんでいる物がいい、時代の破片のような物に惹かれる、路地の放浪が飽きない、道路の穴に不思議を感じる。
などなど。
彼は、画廊と契約してお金を稼いだこともあるんです。
でも、お金が入って来ると、そうやって生きることに違和感があって、結局、契約を打ち切る。順調な軌道が始まると、飽きてしまう。
これなんぞも、似てるね。
似てるなら、僕も絵を描こうかな? 粘土をこねようかな? 鉄で何か作ろうかな? ペーパークラフトもやりたいな。
すると、ゴミ拾いに光明が見えて来るかもしれない。
これは、最寄り駅から自宅までの道のりで拾った、小枝の束。様子のいいグラスに、ざっくり活ける。パリじゃないから、絵にはならない。ならないけど、遊歩しながら無手勝流で楽しむ「いい眺め」作り。
写真と、両立できるかが心配。