梅の花散る街で、東京物語に会う

夕方、家にもどって来ました。

お昼に、プールに行こうと門を出る。「今週から、週3回泳ぐぞ」って。

アパートはオートロックになっているので、内側からは自動で開きますが、外側からは鍵が必要なんです。

すると、門前に朴訥そうなおじいちゃん・おばあちゃんが立ちすくんでいる。僕の顔を見て、何か言いよどんでいる様子。

30歩ほど進みましたが、やっぱり気になって門にもどる。

事情を聞いて、とんでもないことが発覚してました。

同じアパートの住民が、半年以上、行方不明になっていたのです。これが2人の息子。

本人との電話連絡が不通になるは、家賃滞納の督促が連帯保証人のおじいちゃんに来るはで、どうしていいかわからず、半年が過ぎる。

意を決し、本日朝4時に起きて熊本から飛行機で上京して来た2人。初めての東京。

驚きました。部屋の呼び鈴をならしても無反応。まずいよなぁ。

さっそく管理会社に連絡をとる。

「ドアは、開けられません」「でも、ここに本人の両親がいるんですから」と押し問答して、結局、明日の約束をとりつける。

次に向かったのが、捜索願を出すため交番へ。

・息子はちゃんと部屋にいる

・大学も卒業して東京で働いている

・今までは連絡できていたのに・・・

おばあちゃんの気持ちは痛いほどわかるので、警察沙汰にしないほうがいい。とも、よぎる。

なすすべがない、とりつく島がない場合、どうすりゃいいの? 家賃滞納より、息子の所在でしょ、親とすりゃ。

「とりあえず、話だけ聞いてもらいましょう」と説得する。

・上京が遅れたのは、おじいちゃんが肝臓の病気になり、現在も薬づけだから。

・息子は49歳で、証券会社に勤めていたがリーマンショックで会社をやめた。私たちは年金で暮らしている。

・道がわからないので、羽田からここまでタクシーに乗った。料金が高かった。

・これから、泊まる旅館を探さないといけない。

僕にも2人の息子がいるので、見知らぬ土地で安否を気遣う親の気持ちは、他人事ではない。

自販機でお茶を買う。おいしそうに飲む、おじいちゃん。マフラーをしてるけど、首筋が寒そう。

対応にあたった巡査も、同じ熊本県人で、なんとなく安心する。おばあちゃんが説明し、おじいちゃんはポ〜っとしている。

やはり、体調が万全じゃない。

ラッキーなことに、交番の隣にビジネスホテルがありました。

アンラッキーなことに、施錠・解錠やキッチン・お風呂の操作が、ホテルマンの1回の説明ではのみ込めない様子でした。老人には、とてもじゃないけど。

部屋に入ってやりましたよスイッチ類のON OFF。実際に、何回も。

本日3・11。東北の皆さん、熊本から来たおじいちゃんとおばあちゃん。

萬の家に春を。スタンド・バイ・ミー