浅草奥山風景の賑わいに埋もれる

次男坊のかみさんの誕生日を、浅草で祝う。

彼女は上海人で、すでに来日3年目でしょうか。復旦大学で化学を専攻しながら、独学で日本語検定1級取得という飲み込みの良さ。現在は日本人の友だちも増え、仕事が終わればバドミントンとジョギングに邁進中。

次男坊が手配した店は、すき焼きの「今半」。

いろいろな場所で看板を見かけますが、国際通りの本店は、初めてでした。江戸切り絵図と錦絵が店内を飾る。

創業が明治28年。と聞けば、例によって「その時、何が?」と知りたくなり、年表をめくる。

・米ナイアガラ瀑布電力会社が、世界初の商業的水力発電で電気を販売

・仏リュミエール兄弟、シネマトグラフ上映開始

・日本では、日清戦争終結樋口一葉が「にごりえ」「たけくらべ」を発表して、幸田露伴が絶賛

・音では、マーラー復活」を作曲

ニュースを見ているようで、おもしろいねぇ。

「今半」の肉は、おいしい。ネギもおいしい。と来りゃぁ、冬の落語「二番煎じ」でしょう。誕生会の盛り上がりは脇においといて、口を忙しく動かしながら、一人で悦に入る。

ネギ好きを公言する親父、しっかり仲間に見られていて「ネギとネギの間に、肉がはさまっているじゃないの」と指摘される。このチッチャイ描写が、せこくて大好き。

肉も野菜も追加して、もう満腹。動きたくない。

でも、そこは浅草ですから、ひとまず浅草寺に参る。

国際通りを渡り、六区花道商店街を抜けて「木馬亭」の前へ。(注)「木馬座」じゃありません。

今月の出演者一覧表を見ると、国本武春兄さんも出てました。

浪曲と講談の殿堂。建物のくたびれ具合とモギリのおばちゃん、相変わらずいい味出してます。

ここで聴いた立川談志師匠の落語「文七元結」がよみがえる。噺を私有できた至福。

と、隣では「座長 中野加津也」と大書された看板。大衆演劇と豪華舞踏絵巻のショーが今はねて、舞台姿でお客を送る面々が並んでいました。

中野丈、一人一人に満面の笑みと握手。

「本日の入りは、いかがでした?」と僕。

「ありがたいことに、まずまずで。夜の公演をがんばれば、大入り袋が出るかも」。

こんなに接近して舞台化粧を見るのは初めてでした。付けまつ毛、先端は黒ですが根本部は金色。ゴージャス。

それにしても、普段の日曜日より人出が多いよなぁ。

五重塔の手前に、「浅草奥山風景」と書かれた白い幟がひるがえる。奥山って、何だろう?

前に、三社祭の話をしました。今、浅草は三社祭斎行700年を迎え、2月「平成中村座」公演からイベントが目白押しだったんです。

浅草寺秘蔵の絵馬が公開されたり、非公開の伝法院庭園が見られたり、記念の小判が発行されたり。

18日に挙行された「舟渡御(ふなとぎょ)」も、その一環でした。

で、「浅草奥山風景」のこと。

江戸時代、浅草寺本堂の西側一帯を奥山と呼んでいたのだった。大道芸や見世物小屋が並ぶ盛り場。

それを再現したのが「浅草奥山風景」。

骨董、提灯、羽子板、印鑑、七色唐辛子、縁起物、千代紙、桐箱、独楽、矢場、祭り用品の店が連なる中に、人形遣いの大道芸では二重三重の人垣が。

火の見櫓、番屋も再現。

江戸凧も売られてました。凧ねぇ。

・次男坊、かつて復旦大学に留学する。

・キャンパスで凧を揚げようとするも、うまく揚がらない。

・そこに、地元女子大生通りすがって、校外に昼食に出る。

・彼女、1時間後に満腹でキャンパスにもどる。まだ凧と格闘している留学生がいた。「貸してご覧。凧は、こうやって揚げるのよ」。

これが、2人のなれそめですと。

現かみさんは、バドミントンとジョギング以外に、凧揚げも名人です。