川の桜街道に、桃は流れてこない?
「おじいさんは、山へ柴刈りに。おばあさんは、川へ洗濯に」。
現在、長男坊はベトナムに。次男坊はシャンハイに。ついでに、僕は川へ花見に。
音は、エスペランサ。
東京と神奈川の県境を流れる多摩川はご存知ですね? 東京側の支流に野川があります。その野川の支流が仙川。
位置でいえば、成城学園駅の東宝スタジオの脇を仙川が流れています。
砧公園にあるプールで一泳ぎしてから、仙川沿いに歩いて妙法寺に向かう。
「美しい多摩川フォーラム」が主催した、第4回 ”美しき桜心の物語” の語りの会。元NHKニュースキャスターの平野啓子さんが、語り部として登場するというので、どんなイベントなのか拝見・拝聴する。
前半は、瀬戸内寂聴さんの「しだれ桜」朗読。
平野さんは、独演会を全国で20年もやっているそうです。春季の会は、「しだれ桜」が好評らしく、すべて諳んじていました。
この短編を、寂聴さんは何年ころに著いたのでしょうか? 妻子あるカメラマンが、民芸店の女主人と不倫をする物語。
カメラマンは死に、女主人は2人で泊まった京都・嵯峨野にある農家の離れに、また来てしまった。
そこで、ある女と出会う。実はその女とは、彼の妻だった。
30〜40年前の小説を聴いてるようで、こっちが恥ずかしくなってくる。渡辺 淳一センセイお得意の安手の小説みたいで。
後半は、おもしろかったです。トークと朗読。
平野さんは、「美しい多摩川フォーラム」副会長をやるほど、自然好き・桜好きでした。
桜守で有名な、京都の佐野藤右衛門さんとも交流があります。
いつ頃から、日本人が花見をするようになったか? なぜ、花見の習慣が現代まで続いているか?
桜は、春に五穀豊饒を願い、秋の作物を占う樹木なんですね。藤右衛門さんの話では、桜がよく咲いた年は豊作らしい。
咲き方も、見る人が見ると勢いがあるかないか、わかるんでしょうね。
最後に平野さん、今度はテキスト片手に宮沢賢治を朗読する。これは、原文を読みたくなるくらい、よかった。
「賢治は、川の話をたくさん著きました。これは、カバの木が出て来る話です。
シラカバもカバの木。ヤマザクラもカバの木といわれてます。
本日は、時間が制限されていますから、5月のところを読みます。
この話を読むと、川遊びをやらなくなった最近の子供たちが、かわいそうな気がします」。
・川の中に棲んでいる2匹のカニの兄弟。兄カニが「クランボンは笑ったよ」とつぶやくと、弟カニも「クランボンは笑ったよ」と、まねをする。
・そこへ、魚が寄って来る。みんなで遊んでいると、しぶきが挙った刹那、目の前から魚がいなくなる。
・何が起きたかわからない、カニの兄弟。
・「カワセミが持っていった」と、父親カニに説明される。でも、なんだか不安。
・川底で心配げにしていると、揺らぐ川面にカバの花びらが流れて来る。
光を乱反射させる天井に艶冶(えんや)な桜模様の点景が、なんとも美しい。
会場で、「多摩川 夢の桜街道 八十八カ所巡り」というパンフレットをもらう。下流の1番・大師橋右岸から、上流の88番・一の瀬高原まで。流域散歩の楽しみが増えました。
ところで賢治は、桃太郎のおとぎ話を偏愛していたのだろうか?