知ってることは、どれだけなんだろう

散歩中に、いきなり馬に出会ったら、たいがい驚くでしょ?

水泳教室の帰りは、たいがいプールから都心へバスで遊びに行く。

この時は、地元の知らないエリアを選って、寄り道しながら帰宅しようとしたんです。

砧公園の南は東名高速が走っています。南北に走るのが環状8号。この交差点から、東名は首都高渋谷線になるので、クルマを使う人なら、だいたい位置がおわかりでしょう。

最初は、錯覚だと思ったのです。しばたいて、近寄る。

2頭の馬。小さいからポニーでしょうか?

パネルを読むと「世田谷乗馬倶楽部」とある。

砧公園で、乗馬ができるのか? 馬は見かけないけどなぁ。

しばし見入っていると、学校帰りの小学生たちが団体でポニーに会いにくる。2頭は、地元でアイドルなんだ。

ジーンス姿の、飼育係とおぼしき女性登場。

「建設会社の『東京組・設計集団プラス』がやっている乗馬倶楽部です」。

どういうこと?

会社の代表が秋田県出身で、親戚が秋田・十和田で牧場を経営している。そこから譲り受けた2頭が、世田谷にいる。夏になると、避暑のため秋田にもどる。

なるほど。「ところで、どこで乗馬できるんですか?」。

砧公園ではありませんでした。二子玉川駅から徒歩20分、毎週水・日曜日にふれあい体験のできる場所があったのです。ここは、2頭の寝床でした。

大きいのは、「つきこ」でメスの3歳。小さいのは、「りんご」でオスの9歳。同じポニーでも種類が違うのでしょう。

乗馬倶楽部のメニューは、いろいろありました。

・ふれあってニンジンをあげる、引馬は1回300円

・親子合計60kg以下でのんびり乗馬、5分で500円

・上達を目指すなら乗馬レッスン、大人15分で3000円

予約電話090−1705−3289 蓮見さんが受付てます。

世田谷区って、メルヘンだなぁ。

小林朋道さんの本を読んでました。「鳥取環境大学」の森の人間行動学シリーズの著者。

「先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!」

「先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!」

「先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!」

に続く第4弾。

「先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!」を手にとる。

最新刊第6弾は「先生、モモンガの風呂に入ってください!」。

身近なほ乳類、鳥類、両生類の生態学・行動学を研究している。動物を研究しながら、接する人の行動も研究しちゃう教授です。

牧場からもらい受けたヤギを大学で育て、学生は「ヤギ部」を作って世話をしている。

・ヤギ、草を食べる → 

・草、ヤギの体調がおかしくなるような物質を植物体内で生産する →

・ヤギ、有害物質に対抗する手段を考える。または、違う種類の草を食べる

動物界と植物界では、こんな知恵のバトルが展開していたんです。

「驚きや意外性は、『自分はそれを知らない』ということの信号であり、だから、脳は『それを学ぼう』とする」。

教授は、ハプニングを歓迎する気持ちを脳の奥に持っている。森の人間行動学シリーズとは、そういうことでした。

まずは、「ハーメルンの笛吹き男」から始めよう。

めずらしいものを発見する時は、胸騒ぎがあると書く教授。珍事につながるサインを五感で受け取る。

あれは、何だ?

大きなヒキガエルが脱皮している。

しかも、自分の皮を、自分でムシャムシャ食べてる!

人間がシャツを脱ぐとき、下端をつかんで引っぱり上げる。シャツは裏返しになる。それを食べる。見てたヒキガエルの行動が、これ。

皮を脱げば、そこには新しいイボ付きの皮膚が現れる。

ここからが、教授の本領発揮。イボがパンパンに張りつめている。

イボには、もともと毒性の分泌液を蓄えているんですね。長時間かかる脱皮は、動くこともできず周囲に身をさらす危険な状態。

そこで、ありったけの防衛的毒物を背中に分泌しようとする。

それは、推測だそうです。定説ではないらしい。身近なカエルの営みすら、推測の発見にすぎない。あぁ、学問の道は遠いのだ。

追加で、おもしろいこと学びました。

カエルの天敵、ヘビ。

ヘビはカエルを食べようとする時、鎌首を上げる。その形状をパイプで作って、カエルに対峙させる。すると、カエルはどんな姿勢をとるか?

腹部を含めて体全体を膨らませる。相手に、少しでも大きく見せようとするんです。

そして、両手両足を伸ばす。伸ばすだけでなく、相撲の立ち合いの姿勢をとる。微妙に動きながら、気合い充分の姿勢で「いつでも、かかってこい!」。

毒液分泌には、時間がかかるのだった。その上、ヘビには毒液が毒にはならないのだった。

これ、ドイツの神経行動学者・エワート博士の発見。

ポニーだって、実際のところ、カワイイふりして何考えてんだかわかりゃしないよ。