1ヶ月半ぶりに、森を遊び歩く

前回、「里山探偵団・森の遊歩隊」のことを書いたのは4月7日でした。

自然を訪ねて、日頃の行動範囲や視野の狭さを思い知らされた1日でした。神奈川県秦野市、丹沢の南にある弘法山。「森の遊歩隊」の尺度でいえば、標高差200mの入門コースを歩きました。

もう、それで充分「あぁ、シアワセ」でした。

今回は、標高差300mの初心者コース。いつもの行動パターンで、内容を事前に理解しないで参加したので「おや、なにげにステップアップしてる」。

20日午前3時半。

未明の興奮から始まりました。欧州CL決勝。90分で決着つかず、延長戦でも試合動かず。PK戦ドログバがゴールを決めてチェルシーバイエルンを退ける。

時に午前6時半。まずい、ひたってる場合じゃない。用賀駅に駆ける。

溝口駅南武線乗り換え、立川駅で中央線へ、高尾駅で更に乗り継いで鳥沢駅に到着。

すでに、日曜早朝の溝口駅から、車中はアルペンモード全開でした。思い思いのザック、装備、着ているもの。

「よく、登るんですか?」と、話しかける。

「前は、毎週行ってました。今は月2回ほど」。

「傘、じゃまにならないですか?」

「カッパも持ってますが、山を下りて電車に乗った時、回りに迷惑かけるので、なるべく傘を使います」という。

大学の山岳部にいて、もう50年ほど山をやってるベテラン。

恥ずかしくなりました。

もちろん、僕もカッパを用意してます。でね、ずぶ濡れになっても、それがいかにも山歩きしている感じで、むしろ望むところ。傘なんてシロウト臭い装備はしない、と。

つくづく、見てくれだけの人生だったと車窓を眺める。

鳥沢駅前地図を眺めたら、なんと、山梨県まで来ていたんです。

東西に走る中央高速道。去年、清里通いでバスが休憩に寄っていた「談合坂SA」は、目と鼻の先でした。

一気に親近感が出る。

「山仲間では、『中央線の北地域』と呼んでます」と、隊長の益田さん。ざっくり言って、前回歩いた弘法山は丹沢の南。今回歩く扇山は、丹沢の北。

鳥沢駅から登山口までタクシー移動する。

「普通、扇山までは『梨の木平』から登ります」と益田さんが説明する。

そもそも、4月7日に初参加したのは「だれも知らない秘密の小道」を歩くグループで評判だったから。だれでも知ってる山道すら経験ないのに、こう誘われたら参加したくなるでしょ?

地元の人と動物だけが歩くような道を登る。いや、つらいこと。

「歩いている時は、上着を脱いでください。休む時は、着込んでください」。そうだった、前回のアドバイスを思い出す。

扇山まで、途中4回休憩する。

登っているときは、回りを眺める余裕はありません。とにかく、目先の1歩だけで。

ところが、一息入れる段になると、俄然、命がよみがえる。「この鮮烈で透明な空気といったら」という高揚感。たぶん、参加者12名の中で登坂能力最低ですから、急激な高みにいたる感動は金メダル「何も言えねぇ!」。

音なら、木管楽器です。ハイドンがありました。

今回も、花の名前をメンバーから教えてもらいました。

イカリソウ」。これ、地上20cmほどの高さに咲く、2 cmほどの花。

見つけられる目がありません。基本、葉で覆われて咲いてますから、葉を知らないと花の在処がわからない。それに、いずれもサイズが小さい。

見ると、ほんとに錨の形をした花びらでした。

「これはギンラン」と、稲穂のような形の花を見る。米粒にあたる部分が白い花。

「どういう字を書くんです?」

「銀の蘭。詳しくは、ネットで調べてね」。携帯を出して「これが、前に写真に撮った『キンラン』です」。見ると、黄色の花。

山に通っているうちに、偶然花を見つける楽しみができるのでしょう。

扇山まで、通常の「梨の木平」からのルートと山頂近くで合流する。隣の百蔵山から尾根伝いに来たグループとも出会う。

皆んな、颯爽としている。

「胸から出ている、このパイプは何ですか?」。

「背中にタンクがあって、ここから水を吸うんです」。

おもしろいねぇ。1秒を争うトライアスロン感覚なんだね。

もう、季節は初夏。半ズボンに黒タイツがかっこいい。2本のストックで、翔ぶがごとくに歩く。

「今、若い人に流行っているんです」と、益田さんが教えてくれる。

こっちは、足を前に進めるのが精一杯の初心者。

「初心者でも、そんなことやる人はいませんねぇ」とあきれられたのが、ビニール傘の柄で工作したストック。

5月初旬は、よく夕方から雨が降ったでしょ?

雨が降れば、傘がそこらじゅうにうち捨てられてます。骨がバラバラになっているのを、ペンチで取り除き、ストックとして持参。

ちょっと、短い。細さが、頼りない。ビニール傘でなく、ちゃんとした傘でやり直そうか?

「山の道具はしっかりしたものを」。このあたり、木を見て森を見ない狭量さを指摘されてます。

懲りないねぇ。