歴史ある場所で、歴史物語を聴く
梅雨は、明けたのでしょうか?
灼熱の太陽を受けながら、山本さんから、雪が舞う二二六事件の話を聞いてました。
昭和11年2月26日、青年将校と兵1483名が起したクーデター。落語の柳家小さん師匠も、末端の兵の1人でした。
総理大臣官邸を襲撃した部隊は、岡田啓介首相の義弟を、本人と間違えて殺害。本人は、女中部屋に難を逃れた。
高橋是清蔵相は、軍事予算削減で反発され襲撃・殺害される。国道246沿いの、今は公園になっている場所に私邸があった。是清さんは、なんとなく好き。銅像でしか、お目にかかれません。
斎藤實内大臣には、有名なエピソードがあります。
夫に銃を乱射する青年将校たちの前に立ちはだかり、「撃つなら私を撃ちなさい」と、奥さんが言い放つ。倒れた夫におおいかぶさる。妻も腕を撃たれる。
婦道の鑑。帰宅して、我がかみさんの横顔を盗み見る。
えぇ〜、だからですねぇ、そのぉ〜、斎藤實内大臣の邸宅は、どこにあったかという話です。目の前にある100mほどのマンションが、ぜ〜んぶ敷地だったんです。
「事件の話は、子供の頃によく親から聞いてました」と、山本さん。彼のおじいさんは、迎賓館建設の技官をやっていたので、新宿区若葉町に自宅があったのです。
あまり、一般人になじみのある場所ではありません。
四谷駅から迎賓館方向に進み、学習院初等科の裏手が若葉町。
小路が複雑にクランク状になっているのは、「この辺は、江戸時代は武家屋敷が多かったので」。山本さんが説明する。
さっきから、山本さんって言ってます。誰?
朗読をする人です。何を?
平家物語の朗読ですよ。隔月でやっている「平家琵琶で聴く平家物語」の会。秋山良造さんが語る前に、彼が朗読するんです。
僕は、2回目の参加。
平家琵琶というから、楽曲のように演奏しながら原文の歌詞を謡うと思うでしょ? そうではなくて、基本はアカペラ。合間に琵琶を弾く。
昔は文盲が多く、音で平家物語を聴くスタイルが一般的だった。文字を読むスタイルは、ずっと後。
「ですから、なるべくテキストを伏せて、耳で聴いてください」と、秋山さん。
平家物語のCDを聴いてますから、主旨はわかる。ところが、意味がわかるのはなんとなく、なんです。人間には欲望があって、第一関門をくぐると、すぐ第二関門に行きたがる。
より、正確に知りたがる。
でも、耳が慣れてないから、たちまち挫折します。すると、どうしてもテキストに頼る。
頼ったところで文語の素養がないんだから、理解はとっちらけますけどね。
文語ばかりではありません。身ぐるみ、知識がない。
今回は「巻一 殿上闇打」と「巻六 祇園女御」。清盛の父・忠盛と、母の話。
「私は、国文学者じゃありません」と語る秋山さんの事前解説がなければ、とても無理です。
「巻一 殿上闇打」は、テキストを読みながら、「巻六 祇園女御」は耳だけで聴きました。
結論。山本さんのように自分で声を出して読んでからでないと、秋山さんの琵琶は味わえない。
ん〜、長いつきあいになりそうだ。文庫を買いに行こう。
次回は、9月9日にあります。楽しみです。
帰りは、四谷駅と反対方向に向かう。
若葉町から、南元町へ。四谷駅から信濃町駅の間、総武線・中央線が通る赤坂トンネルを発見。東京は、ほんと平坦じゃないねぇ。
「江戸名所図絵」看板を読む。
南元町は低地で、ヨシが繁る池沼だった。鮫河となって赤坂の溜池にそそぐ。架かっていた橋が鮫河橋で図絵に描かれた。町は、江戸城の外堀工事で堀った土を埋めてできたのだ。
道路の向こうは、赤坂御用地。知らなかったぁ。
それでは<これからショータイム>