不良がイタにつかないお父さん物語

渋谷ヒカリエで「ウエストサイドストーリー」見てきました。

物語はとびとびに知ってました。曲も、知られたものばかり。でも、初めて「こういうストーリーに合わせて、このナンバーが、ここで」と、順列が整理される。

50年前に発表されたミュージカルなのに、ぜんぜん古くない。

その時は、中学生。姉たちの熱狂をリアルタイムで感じてました。50年後に熱狂する観客も、圧倒的におばあさん・おばさん・おねえさん。

ヒカリエ11階の劇場「オーブ」に昇るエレベーターで、男は僕一人。

あの、熱狂を再び味わいたいという顔。外国でも、事情は同じなのだろうか?

高校入学して、姉から「ぜひ」と薦められてちょっとやったのがバスケットボール。籠球。ろうきゅう、と読む。高校生は、もちろん読めなくて、最初から混乱していた。

サッカーは、蹴球と言われていた時代。「なんで、こんなむずかしい漢字書くの?」。

姉が薦めたのはワケがあって、映画「ウエストサイド物語」に舞い上がっていたからです。

かっこいいもののアイコンが、バスケット。弟は、そんな思惑がわからず、半年もたずに退部。大いに、迷惑でした。

もう、「オーブ」は行きました?

別にミュージカルは見なくても、フロアまでは行けます。周囲を見渡すと、眼下の駅前風景がジオラマのようにおもしろい。

これが、超高層ビルだと望遠風景に目が奪われますが、11階だと、地上を見る頃合いの高さです。

地上は、すべて模型サイズ。飽きません。

信号に合わせて、go・stopを繰り返す人々やクルマ。東横線が地下にもぐって、副都心線とつながる工事現場。

視線をちょっと上げると、まわりのビルの屋上が見られる。これも、おもしろい。

大型看板を裏で支える鉄骨。冷暖房の室外機は巨大。遊園地もある。

でも、小振りな雑居ビルになると、こうはいきません。ビルを人間に例えるなら、世間には見せられない舞台裏のような風景になります。

とある事情、言えない都合、わけありの事件。

読み取っちゃいますよ、これは。殺人ドラマのラストシーンは、波がくだける断崖だけじゃなくて、こういう場所でロケしてほしい。

恋人トニーを殺されたマリアの物語の舞台は、マンハッタンのウエストサイド。渋谷の屋上の10倍シビアな界隈です。

50年前のミュージカルなのに、古さを感じないのは、50年後も事情が同じだから。

歌とダンスだけに夢中になっていたのが、むしろ、はっきりストーリーがわかると「今の話じゃないの?」と思えるから。

移民 → 家族はアル中・ヤク中 → 仕事ナシ → 街の不良になる → シマ争い → 決着をつける時

4年に1回の大統領選挙で毎回争点になる、増え続ける不法移民への対応。ただでさえ、市民権を持っている人の仕事が、どんどん減っているというのに。

まだしも、50年前は牧歌的でした。

牧歌その1 ジーンズ、指パッチン、コンバース、バンダナなどのファッション。

牧歌その2 バスケット、ダンスパーティ、ジュークボックスなどの遊び。

牧歌その3 金網フェンス、レンガ壁、ガード下、外階段、落書きなどの景観。

街の不良のアイコンは、かっこよくて、今じゃ日常。僕が好きなのは、牧歌その3。

でも、1〜3まで無縁の企業戦士もいるんですね。隣の席のお父さん、奥さんに連れられて来たのはいいけれど、気持ち良さそうに終始ご就寝。

天下国家を語らせたら、我が社のアクションプランを語らせたら活き活きするのに。あまり、いじめないで。

レナード・バーンスタインレニーは、何歳で曲を作ったのだろうか? 若い。