仕草が、いろいろ語っている動物記
コロッケ定食を食べていたら、「チャンネル、替えていいですか?」と、小学生男子に言われる。
半畳ほどあるテレビ直前の席。バラエティ番組やってました。「サッカー見たいんです」。えっ、ザックのベネズエラ戦があるの?
新聞がないから、テレビ番組がわからない。
A代表の顔ぶれ、なんだか懐かしい。君が代を歌ったのは、HAN KUN。砂漠の住民のようなのを冠ってる。これがウリなのか。野生児みたいで、いいね。
試合は、15分ほどしか見られませんでした。夜8時ころまでに、食堂の隣にある酒井牧場に行かねばならなかったので。
夜の搾乳の時間。
30頭ほどの乳牛が、蛍光灯の薄明かりの下、順番に搾乳されるのを待っている。忙しく働く酒井さん夫婦と一緒に動いているのは、飼い犬の「こなつ」。
朝晩の搾乳につきあっているから、へたなシロウトより手順は知ってるような目つきをしてる。
食堂に行く前に、牛たちが餌をモリモリ食べているのを見てました。
「普通に生きるための量からすれば、過剰に食べさせてます」と、酒井さん。
人間と同じで、乳は子牛を育てるためにある。
それを、人間が改良して乳牛を作った。でも、母体からカルシュウム分が減っていくのは避けられない。だから、搾乳されるたびに少しずつ痩せていく運命にある。
命を削って生産された牛乳が、人間のカルシューム補給に使われるのだ。
パックの牛乳しか知らないから、肝心なことをわかってない。多いよねぇ、そういうこと。
ギクリとしたことは、やせた白馬を見た時も一緒。
馬の療養牧場があるんです。全国から、健常じゃない馬が集まって来る。余生を過ごす馬が集まって来る。老馬介護施設。
近くだから、よく寄ってご機嫌を伺う。
皆んな、おとなしい。
柵内に山と積まれた飼いば。年寄りだから「こんなに食べられない」のかもしれない。
骨ばってはいるけれど、プロポーションが美しい。動く、骨格標本。
隣の柵には、おかっぱ髪のポニーがいました。こちら、何が原因で療養してるのか? と思えるほど元気がいい。
馬が草を食む音は、好きです。録音したくなるくらい。臼歯ですりつぶす音が、いかにもおいしそうなんだ。
音が聴きたくて、そこら辺の草をむしって食べさせる。勢い良く食べてくれるから、こっちも調子に乗って、どんどんあげる。
「そういえば、小学校の給食では脱脂粉乳をよく飲んでたなぁ」。皆んなは「まずい」と敬遠してたが、僕は好きだった。
カルシューム少年は、骨粗しょう症が話題になるほど馬齢を重ねる。あぁ。