ブスが、そんなにセンセーショナル?
読み終わった本を図書館に返却する前に、渋谷で途中下車してディーゼルアートギャラリーに向かう。
イギリスでメーキャップの仕事をやっている、アヤミニシムラ。イギリスの写真家ランキンが、彼女のメーキャップを撮り下ろしたというので。
アヤミさんは、i-Dなど雑誌で作品を発表中。
「レディ・ガガとかM.I.Aのステージやビデオのメイクもやってる方です」と説明される。
「ランキンさんは、エリザベス女王からマドンナまで撮ってます」。CFや映画もつくっているらしい。
スッピンに、カラフルな光彩を投影したようなメイク。テーマが、「Cyber」だというから納得しました。スピード感があって、ドライで、硬質。
木嶋佳苗とは、ま逆だなぁ。
読んでみました、「毒婦」北原みのり著。
意外だったのは、公判が1月10日に始まって4月13日に判決が出たこと。死刑が言い渡されたけど、木嶋被告は即日控訴。
極刑が出るほどの公判にしては、短期間で結審じゃないかな。
試しにネットで画像ページを検索したら、54ページありました。ロックスターなみ。
パティ・スミスだって、こんなには無い。控訴中なので、After The Gold Rushの心境でしょうか。
画像ページには、「毒婦」の他に、「木嶋佳苗劇場」と「別海から来た女」という本が紹介されたました。
雑誌の見出しも「平成の毒婦」「練炭女」「婚活サギ女」「なりきりセレブ」「蜘蛛女」と、盛りだくさん。
どれほどワイドショーと雑誌をにぎわせたか、想像できます。
僕は、新宿の中華屋で餃子を食べ食べ、スポーツ新聞で読んだことを思い出す。「○○さんは、ベッドで道具を使おうとした」とかいう、彼女の公判中の発言が載ってた。ラー油を、タラリ落とす。
それにしても、ブスでデブだねぇ。だいぶ前に、和歌山カレー事件の林真須美がブスデブで評判になったでしょ。あれ以来の、世間をお騒がせしたブスデブ。
著者の北原みのりさんは、女です。類書の中で、女が著いたのは、これだけでしょうか? 女目線を強調した本書。
・男たちは、とても安全な世界で生きている
・たった1人で相手にするので、小柄で弱そうな男たちを選んだのではないか
公判中、被告のファッションや仕草に目をやる著者は、確かに女目線です。検事の青臭さい尋問にも、女目線を向ける。この検事、もてないだろうなぁ。友だちいないだろうなぁ。
「援助交際世代から思想が生まれると思っていた。生んだのは木嶋佳苗だったのね」とは、上野千鶴子さんの言葉。
米原万里さんのデビュー作は「不実な美女か、貞淑な醜女ブスか」でした。
2人とも敬愛してます。女だから、女が書けるということはあるでしょう。
でも、僕の読後感は違うんだ。
1日24時間の内、佳苗が仕事でセックスしたのは何分だったの? あとの時間をどう過ごしていたの? だから、セックスだけからルポルタージュすると誤るんじゃないか?
美人でも、もてないのは大勢いる。仕事ができないのもいる。アッパラパーもいる。そして、男運の悪いのは大勢いる。
ブスでも、もてるのは大勢いる。テキパキ仕事ができるのもいる。清潔感があるのもいる。そして、浮気性は大勢いる。
女王、女性閣僚、女性経営者、女性教授、専業・兼業主婦、独身女にブスは多い。スポーツをやっていようが、学生だろうが、ボランティアやってようが、バイト中だろうが、ブスだらけ。
当たり前でしょ、世の中に美人は例外なんだから。
古今亭志ん朝師匠も、噺の中でくすぐりをいれてました。「なまじ顔があるおかげで、苦労している女はいっぱいいる」。高座の屏風が倒れるほどの、大爆笑。
男は、おしなべてスリム美人が好きなわけじゃない。世に、デブ専、チビ専、ブス専、イモ専もいるくらいでね。
それを、佳苗はブスなのに、生意気にも、人並みにセックスして、あまつさえ男を手玉にとったことが「許せない!」って、なぜそんなにイライラするのかなぁ? 男も女も。
僕は、長いことカタカナ職業の女性と仕事をしてきました。
アートディレクター、ファッションデザイナー、インテリアコーディネーター、エディター、キューレーター、イラストレーター・・・・。作品は、美しい。容姿は、不問・・・・(にしておかないと、後でむしられる)。
容姿は上等、でも作品はヘタレ。これもたくさん経験してきました。
メイクアップ・アーティストのアヤミ女史は、どうでしょう?