若かりし頃は、農夫だったノワレ
もともと東京都の土地で、来年3月には都へ返還するので、閉館になる「銀座シネパトス」1と2と3。
戦後のドサクサが匂う、数少ないディープな場所。だいぶ前に映画館は改装されて、残念ながら、きれいになっちゃいました。
けれど、階段を降りて並ぶ飲み屋街のほうは、未だ戦後が健在で好きです。
これから半年間、お別れ興行の企画が目白押しでした。
・ピンク映画50周年記念特集
密 悶 犯 襲 縛 猥 獣 痴 濡 舌 鞭 激 吸と、男子中学生が熱心に辞書を引くようなヤラシイ表意文字が、パンフに百花撩乱。
高橋伴明、井筒和幸、周防正行監督がデビューしたピンク映画は、もう「歴史」になってしまった。
「夢見る少女が出逢った、このすばらしい恋と冒険! 誰かに話さずにはいられない純白の詩!」ですよ、お客さん。
「はじめて映画に出た、あなたの天地真理」が、ジュリーのタイガースと共演した「虹をわたって」上映。「あなたの」ですよ、しかとしてちゃだめよ。
9月30日は、彼女が舞台挨拶をするのだ。ファンの集いもあるのだ。見たいなぁ、40年前のアイドル。
・映画スタア 高倉健
「旅の途中 そして、あなたへ」と題して、9月21日まで、「網走番外地」から最新作「あなたへ」まで、一挙15本。
「あなたへ」のポスターには、「シネパトスさんへ」と健さんのサインが入ってる。俳優には、大事な映画館なのだろうか。
9日に佐藤純彌監督、16日に降旗康男監督のトークショーも開催。これも見たいねぇ。
はからずも、リアル「残り物名画座」に寄ってから、いつものエルメス10階にある無料映画会へ。
9月は「ぐうたらバンザイ!」を上映してます。1967年製作の恒例「残り物名画座」へご案内ぃ〜。
主演はフィリップ・ノワレ。あの「ニューシネマパラダイス」は、フィリップ・ノワレなくして語れません。この役のために俳優をやって来たんじゃないか、と思えるほど。
渡されたパンフを読むと、監督はイブ・ロベール。1961年に「わんぱく戦争」、62年に「わんぱく旋風」を撮った監督でした。
「わんぱく戦争」は、図書館から借りたDVDで見ました。
南フランスの小さな2つの村、ロンジュベルヌとベルラン。隣り合った村の子供たちは、戦争状態。
喧嘩の勲章は、敵側のガキ大将の服のボタンを奪うこと。奪われないようにするには、どうしたらいいか?
そうだ、服を着なければいいのだ。かくして、わんぱくどもは、丸裸になって平和な村で喧嘩をする。
監督は、よっぽど田舎が好きと見えて、「ぐうたらバンザイ!」も田舎が舞台。
フィリップ・ノワレ演じる農夫のアレキサンドルは、美人の妻に逆らえない。朝から夜まで、命じられるままに働きっぱなし。
疲れようが、飽きようが、さぼろうが、逃げようが、腹をたてようが、ダメ。「もう、いやだ。こんな暮らし」。
そこへ、思わぬ僥倖がやって来る。「もう、これからは1日中ベッドで寝る」と自宅に引きこもる。愛犬の活躍、村人との騒動、新しい恋人登場と続く。
村人から「どこへ行く?」と問われ、「さあね」と答えてFIN。
お天道様にでも聞いてくれ、と若いフィリップ・ノワレは言ったっきり、旅の空。老いて「ニューシネマパラダイス」の映写技師になっていたのだった。