丸一日かけて周遊したら、常識だらけ

「音だっち」ツネツネの実家から、お米が届きました。

野菜王国・茨城県に住んでいるツネツネの両親。

1回、訪ねました。お姉さんか、というくらい若いお母さん。山男のお父さん。工作好きで、水槽を手づくりしてタニシなんぞを飼っている。

鉄のフレームにガラスをどう接着するのか。想像するだけで、マニアックな道具持ってんだろうなぁ。

いずれにしても、お米。「新米だから、ちょっと水を多めにして炊く」のがコツらしい。食べ物オンチだから、素直に納得する。

袋に書かれた「ふっくらと上手に、ご飯を炊くには」と「お米を保存する時の注意事項」も、念入りに読む。いわく、

・ふたのある容器に移し替えて、乾燥した空気に触れないようにする。そうしないと、水分が蒸発してヒビ割れする。

・容器は、マメに掃除する。古い米を使い終わってから、新しい米を入れる。

温度や湿度が高いと虫が発生する、と書いてある。米に水がかかると、カビが生える。臭いを吸収しやすいから、洗剤・灯油・魚のそばに置いてはいけない。

お米って、こんなにデリケートなの? 自動炊飯器でふっくらワンタッチの前に、これだけ気を使わないといけないんだ。

失礼しました。これから、心して食べます。

ありがとう、とお礼の電話をしてから、一日渋谷周遊。あっちも、こっちも。

まず、テレビの修理依頼。

買ってから1年ちょっと過ぎて、画面がちらつきだす。ほとんど見えない時もある。我慢してましたが、LABIに問い合わせすると、メーカーがチェックに派遣するという。

点検は、有料になる。修理しても、消耗品の取り替えにはお金がかかる。

「家電製品でも、パソコンでも、メーカーの保障期間は1年間が多いんです」。

「いつごろから?」

「10年前くらいから」。

もう、永年愛用というのは死語なんだね。ゆかしき伝統は、とうの昔になくなって、当節は安物をひたすら買い替えることになった。

テニスを始めることになったので、スポーツ用品店へ。

教室からのお達しで、テニスシューズを履くよう指示されていたんです。

「ランニングシューズは、前移動の靴。テニスは、横移動するので、両サイドをサポートしているんです」と。

入門者だから、激しく横移動しないと思うんだけど。飽きっぽいから、バーゲン品の中から探す。

それにしてもですよ。テニスウェアは、白と思い込んでいたら、とんでもない。帽子から靴まで、にぎやかな色ばっか。

もっとも、いかにもテニスやってますファッションじゃないから、ホッとする。

東急百貨店7階の、丸善ジュンク堂に到着。

国書刊行会が、創業40周年で記念フェアをやってるんです。全国70書店で、冊子「私が選ぶ国書刊行会」をもらえるので。

今どき、箱入りや金箔使いのゴージャスな造本をする国書刊行会。知る人ぞ知る61人のコメントを集めた冊子も、コクショならでは。

「これからも、『変態本』をたくさん出版してください」と、エールを送られている。

たまりません。

東急プラザ前を通りかかる。津軽三味線の音。

前も、エントランスでフラダンスやってました。「毎月19日は、東急プラザDAY」なんだね。今回は、小山慶一、慶宗兄弟。

小山流というのがあって、そこで修業を積み、晴れて師範になった若手。

タダで聴けるのは、ありがたい。欲を言えば、30分じゃなくて1時間半ほど演ってもらいたい。

渋谷図書館に着く。

今までは、習慣で赤坂図書館に通ってました。でも、蔵書のない本もオーダーできるので、これからは渋谷図書館にする。

10冊ばかり予約。予約だけじゃ寂しいから、「鉱山をゆく」を借りる。炭坑遺産とか、鉱山廃墟とか、そそられる目次が表紙に並んでいたので。

帰宅して「私が選ぶ国書刊行会」を読んでいるうち、知らん間にウトウト。

携帯電話が鳴っている。手にした時は、切れていた。

掛けなおして「あぁ、陽子ちゃんか」と、我ながら間抜けな言いよう。掛けて来た人の名前入力もできてないので、誰からの電話か不明だった。

メールはやりとりしますが、声を聴くのは久しぶりの「三姉妹だっち」の一人。

「留守電、聴いてくれました?」

「やりかたが、わからないんだ」。

陽子ちゃん、無言の一拍。

年寄り向けカンタン携帯も、僕にとっては複雑で。「だいじょうぶ、ボタンを適当に押していれば、聴けるようになりますから」と、なぐさめられる。

ツネツネから言われたことを思い出し、唐突に「ところで、新米はちょっと水を多めにして炊くって、知ってた?」と、あらぬ方向へ。

お母さんには、常識でした。

言わずもがなの常識、新しい常識、なににも知らずに生きてきた。いいんだ、僕にはコクショがある。