人はここまで想像できる、極地本

本の電子化が盛んです。

およそ、電子化が似合わない出版社といえば国書刊行会

そもそもベストセラー狙いの本は、無い。実用書も、無い。立身出世に、役に立たない。

だから、しびれる。身びいきでPRしちゃいます。

40年間、よく倒産せずに続いてきました。今、創業40周年フェアを全国の書店でやってます。赤い帯をした既刊が、棚に並んでます。皆、脚光を浴びて、ちょっと気恥ずかしげな本たち。

書店で入手した新書版「私が選ぶ国書刊行会の3冊」読みました。面白そうな本がこんなにあるのに、ほとんど読んでない。

ありきたりの本じゃないものを求めていた61人の「私」たちの推薦文。総じて「こうゆう本を永年待っていて、読めた時に、我が存在を確信した」が次々と。

「私」に、ありきたりの人はいません。そこで、気になる人の、気に入った本をご案内。

池内紀 ドイツ文学者 「日本敵討ち異相」 日本人が発明したフシギな正義、かたきうち。

亀山郁夫 ロシア文学者 「ロシア・アヴァンギャルド」全8巻 準備期間を含めて10年かかった奇跡の全集。

菊地秀行 小説家 「ドラキュラ叢書」全10巻 彼の創作活動に影響を与えた叢書。

主に、海外文学の周縁とか欠落しているものを探して、熱心に発行する国書刊行会。編集原理主義のねばり。


   
佐野史郎 俳優 「芳年妖怪百景」 残酷画・血みどろ画・うらめしい眼差しの妖怪画の指針。

柴田元幸 英米文学者 「放浪者メルモス」 ゴシック小説の系譜の中から、とにかく話が面白い。

高田衛 国文学者 「鳥山石燕 画図百鬼夜行」 歌麿の師匠・石燕の妖怪四部作。

高山宏 英文学者 「普通の鍵」 選書をした荒俣宏の「世界幻想文学大系」の一冊。

幻想文学・お化け本も、国書刊行会のウリの一つ。 

嶽本野ばら 小説家 「それいぬ」 フリーペーパーで連載していた原稿を持ち込んで、めでたく刊行。

巽孝之 アメリカ文学者 「鯨とテキスト」 「白鯨」を著いたメルヴィル自身が、鯨のような怪物。

・谷川渥 美学者 「バルトルシャイティス著作集」全4巻 渋沢龍彦が発案し、本人が翻訳した巻も。

坪内祐三 評論家 「綺想礼讃」 3冊なんて、少なすぎる! 最近の本の中から選べば。

中野美代子 中国文学者 「二つの死闘」 お上品で立派な体面を誇ったヴィクトリア朝に流行した殺人。

沼野充義 ロシア・ポーランド文学者 「アベラシオン」 リトアニア人の、異端の美術史。

野崎歓 フランス文学者 「選ばれた女」 近年最高の翻訳小説は、異形の大長編。

どうです? 覚悟を決めてじっくり読んでみませんか?

トスカ」でも聴きながら。2時間あります。

東雅夫 文芸評論家 「近世民間異聞怪談集成」 ふるさと怪談をふんだんに開示した大冊。

松岡正剛 編集者 「山東京伝集」 叢書江戸文庫の1冊で、京伝の戯作力が存分に堪能できる。

横尾忠則 美術家 「怪談」 ハーンの原作が、シュバンクマイエルに憑依した画集。

どちらさんも、血肉・体温にぴったりの本に巡り会えたので、「私の出生の秘密」を他人に知られたくない口調で語る。

面妖なるかな、人間。