皆んなカッパを着れば中止にならない

雨が降ろうが、槍が降ろうが、ですよ。

港湾とは、海である。海は、水が売るほどある。雨も水である。

この、とっちらけ三段論法により、まさか中止になるとは思ってもいませんでした。

芝浦運河まつり」に合わせて実施されるはずだった、芝浦地域の運河クルーズ。

港区の図書館で入手した、港区広報誌で「まつり」を知ったのは、1ヶ月ほど前。参加資格は、港区在住・在勤・在学だったのです。

交渉して「空きがあれば」と、かすかな希望をつなぎ、「空きがあるので」と連絡をもらって、勇躍、田町駅に着く。湾岸に向かう東口の通路に、張り紙あり。

「雨天中止」。なんじゃ?

波止場に雨はつきもの。「雨を理由に休んでちゃ、ハナシにならない」。

そうか、それはカッパを着込んで作業する勤労者の話。これは、一般人をお客として迎える運河クルーズだった。つまり、海上ピクニックなんだ。

納得したけど、これが、悔しい1。

悔しい2は、午後のクルーズは参加資格に関係なく、誰でも乗船できるということ。なんだよぉ、最初から言ってくれよ。

思わず、前のめりになって「次回は、いつ実施するんですか?」と電話で訊く。

「さぁ、来年でしょうか」。

港湾好きとしては、そうとうガックリきました。

振り上げた拳を、どこに降ろしたらいいのか?

しょうがないから、田町駅・西口に出て、港区三田図書館に向かう。

ちなみに、僕は傘をさしません。オレンジ色の工事現場用のカッパ姿ですから、晴の日と同じくらいの自由さがあります。

傘をさしてると、どうしても最短距離を歩こうとするでしょ? そういう気持ちがなくなって、あっちフラフラ・こっちフラフラできるんです。

23日は日曜日で、慶応の学生もいないし、店も閉まっている。

「いつもよい肉 玉子屋」を見つける。モルタルの店舗。いい味出してる。見上げると「元気再生酒場」とある。ますます気に入る。

平日の夕暮れ、三々五々に勤労者が集まってくるんでしょう。閉店の今日のたたずまいを見ていると、店にも休養が必要なのがわかる。

三田図書館

新聞の縮刷版のバックナンバーが充実していて、前に、昭和30年代を読んだことがあります。新聞活字が小さい時代、それの縮刷版ですから、そうとう目に悪い。

映画をやっていたのが、渡りに船。

ラルジャン」。ロベール・ブレッソン監督で、原作がトルストイ

プロの俳優を使いたがらない監督で有名です。音も、ほとんど使わない。

そこまでは、知ってましたが、どんな監督? と椅子にすわる。

どうしても金が必要だった学生が、父親に金をせがむ。父親、冷たく拒否する。

友だちに相談すると、なんと偽札を出す。偽札でカメラ店に入りフォトスタンドを買い、おつりを受け取って、まんまと成功。

カメラ店主は、偽札を支払いに回す。受け取った男は、カフェで使って・・・・。

というあたりから、まぶたが重くなる。

たっぷり眠ました。なにしろ、起きてしばらくすると終わりましたから。

チラシを読むと、カフェで偽札を使った男は警察につかまり、失業し、銀行強盗をして再度つかまる。

出所したら、妻は去り、娘も病死し、絶望し、田舎の老夫婦を斧で殺し、またまたつかまる。

使われた音楽は「バッハ 半音階的幻想曲とフーガ」とありました。

84分の映画で、たぶんこの1曲しか流れてないでしょうか? 

聴いていると、絶望した様子が浮かんできますね。ドキュメンタリー風演技にもピッタシ。

DVDの棚に行き、4枚借りる。市川雷蔵大菩薩峠」、ウォーレン・オーツ「ワイルド・バンチ」、植木等「大市民」、パリ5月革命「革命の夜、いつもの朝」。

自宅テレビのスイッチを入れて、「そうだった」と気付く。

今、白い斑点と筋がチカチカして故障中だった。選りに選って借りてきたのに。とどめの、悔しい3。