ショコラティエの人間国宝が来日

6月に銀座に出掛けて、3軒のチョコレート店が並んでいるのが目に入りました。

どれも小振りの店。この箇所だけ、いかにもヨーロッパ。

僕が入ったのはHIRSINGERイルサンジェの店。紅色の店内。ジュリエット・ビノシュが出演した映画「ショコラ」を思い出す。

所はフランス。まわりは田園の小さな村。おじいさんの頃からやっている店。店主・ショコラティエ・お客の人生が甘くて苦い。

想像がどんどんふくらみました。

あれから4ヶ月、ほんとにフランスからムッシュ・イルサンジェが来日し、ケーキ作りを披露するというから楽しみに出掛けました。

すごい人だったんです。

トリコロールのメダルをかけてるでしょ? そして、その奥の彼の襟元。コックコートの襟もトリコロール。彼は、日本でいう「人間国宝」。正式には、国家最優秀技術職人賞の受賞した、折り紙付きのチョコ職人でした。

現在は、賞を審査する側にいるエドワール・イルサンジェ。

4代目です。想像どおりで、うれしいねぇ。

1900年に創業したオーギュストが初代。スイス国境に近い村、フランス東部のジュラ地方のアルボア村に開店。

日本なら明治33年。ご当地では、普仏戦争や第1次世界大戦の戦場になる。名もない村で、せっせとチョコレート菓子を作っていたオーギュスト。

もう、これだけで映画になります。

アルボア村。パリから電車で3時間。人口3500人。30分で村を1周できる。まわりは、ぶどう畑。ワインとチーズが特産。

と、ここで豆知識。

ショコラ大国だけに、各地に地元の特産物を取り入れたものがあるのだった。レモンを入れたもの、塩を入れたもの。ということは、地ショコラがあるってこと?

エドワールには、料理人の友だちが多かった。彼らは、旬の素材を使って仕事をする。「なら、ショコラも旬の材料でやってみよう」と4代目の革新が始まった。

機械は使わず、レシピは、もちろん手づくりの門外秘。

会場で最初に出されたのが「いちぢくとぶどうのハーフ&ハーフ」と「くるみのプラリネ」。

しみじみしました。男は、損な人生送ってるね。おいしいチョコを味わったことがないから。

ひるがえって、女は。秘かに、おこたりなく、いそいそとアクセスする。隣の席に坐った樋口嬢、口にして小さな声で「おいしい」。感、きわまった目をしてました。

もう一品は、「ル・デリース・ド・ラ・バローヌ」。ミルクチョコとキャラメルとサブレのケーキ。

バローヌとは、かみさんのあだ名。エドワール、あなたはいい奴だ。

会場では、ケーキ作りの最終工程を実演して、招待者に配られました。シックな紅色に、チョコの点々を乗せた八角形。デザインも秀逸。

銀座の店に並ぶものは、すべてアルボア村から輸入されたもの。バローヌも、クリスマスケーキとして、300個予定しているという。

ところで、フランス東部といえばパトリシア・カースの故郷。ひさしぶりに、こちらも堪能。来日してほしいなぁ。