どう、気分切り替えてやってる?

トリッチ・トラッチポルカの気分です。

心ウキウキ、笑顔がこぼれる曲。聴いたのは、清里にある観光施設・萌木の村。ここには、トラック荷台分の巨大オルゴールがあります。時間が来ると、4〜5曲鳴り出す。

どういう仕組みになっているのか、裏手に回る。

オルガンやラッパに空気を送る発電機が据えてある。1曲終わると、お兄さんが次の曲をかける。

何を取り替えるかというと、長い長い、穴のあいたボール紙。穴が送風口になっているのでしょう。すると、その楽器の弁が震えて演奏になる。

ボール紙は、折り畳み式。鳴らす楽器の数が多いから、1曲あたり、広辞苑5冊分くらいのボリュームはある。

10月は、トリッチ・トラッチポルカの気分で始まりました。

その前の9月30日、夜は風速25mの台風17号。戸締まりして、布団に潜り込んで落語聞く。古今亭志ん朝師匠の「酢豆腐」。

伊勢屋の若旦那は、粋を売り物にするイヤな奴。お金があり、女の子にもて、グルメを気取る。

なよっとしたところ、数ある落語家の中で、志ん朝師匠のが一番。武士が自分のことを「拙者(せっしゃ)」と言いますね? だから町人も、ならって「拙(せつ)」と言う。

でも、このへりくだりには気取り・プライドがプンプン匂う。伊勢屋の若旦那が「拙なんぞの場合は」といえば、嫌みでクスクス笑える。

も一つ、「酢豆腐」で覚えた言葉があったっけ。

・町内の若い衆が2升ばかり酒の都合をつけた。さっそく酒盛りを始めたいのだが、あいにく、肴を買うお金がわずかしかない。

・これっぱかりのオアシじゃ、どうしようもない。誰か、いいアイデアはないか?

まず、安くなくちゃいけない。これだけの男がいるんだから、数が多くなくちゃいけない。腹にたまらなくて、よそから見られても見場(みば)がいいもの・・・・・。

・注文どおりの、いいもの知ってる。

・なに?

・くろもじ!

・バカ、お前はあっち行ってろ。

噺の前後の様子から、くろもじとは、楊枝のことらしい。

・皆んなで、くろもじ喰わえてりゃぁ、うまいもの食ってるように見えるじゃねぇか。

・ひっかくよ。

木にも古語があるんだ。くすのき、かつては、くろもじ。清里の森林で「くろもじ くすのき科」の札を見て、やっとつながる。

ひきづって思い出したのが、くろもじの森林を抜けて眼前に広がった「ヤッホーの丘」。子供たちの自然教育に使われる研修施設。

北に小諸、南に富士山。東に大月、西に諏訪の方位がある大草原。

「思いっきり大きな声で『ヤッホー』と3回叫ぼう。全員の声をそろえよう」。

今まで、何回ヤッホーと叫びました、お客さん?

僕は、数えるほどしかないので、とりかえすように叫び続けました。ほんとに、こだまします。

記念写真も撮りました。ですが、この広さを再現することはできません。裸眼が捉える広さが、数センチの写真になると矮小化します。

飲み込まれるばかりに延々。3mはあろうかと思われるススキの叢。足元を飛び跳ねるコオロギ。無音。まんじり。

敷地は端から端まで、ゆっくり歩いて1時間半程度。ということは、3〜4kmでしょうか? それでも、今までの人生何だったのか? と思わせる周囲の山並みと空。

季節は、こういう場所で生まれるじゃないか。

台風一過、なにごとも無かったかのように10月スタートし、柄にもないことを思いやる。

落語「酢豆腐」を終わる。趣向を変えて、平澤真希さんを聴いてみる。萌木の村で演奏会をするとチラシに出てました。

夜の「ヤッホーの丘」で聴きたかったねぇ。