スタジオの隣でロケできた58年前
水泳教室が終了後、午後はピーカンでしたからプールの裏手にある大蔵運動公園を歩く。
外周の林苑ゾーンに進むと、斜面の先に平地が広がり、その先に仙川が望める。山道のように整備された林道を降りてみる。麓で幅3mほどのせせらぎに出会う。
親水ゾーンです。仙川の支流でしょうか?
秋の強い日射しを受ける川面づたいに歩く。凝視していると、底から水玉が湧いてくる。小さな水源なのだろうか?
葉や枝の影、そして地形の影響を受けるのか、水玉も変幻自在な形を作って流れていく。
ドングリの形に見えたり、女の子が両手を挙げているように見えたり。これ、一瞬で消えるけど、おもしろいから1時間ばかり眺めてました。
このうっそうとした林は、世田谷区大蔵三丁目公園、と案内板。
柿の木を見つける。まだ、緑色。うっすら橙色したものは、すでにカラスが食べた穴があいている。
「団地の人が、よく採って食べるよ」と、地元のお父さんの声。
平地部に団地あり。東京都住宅供給公社・大蔵住宅というのが正式名称。
ここは、元は一面の田んぼ。
「この田んぼと、前の山で『七人の侍』が撮影されたんだよ」と驚くことを言う。
地元の彼にとっては、映画のロケ見学が日常にあった少年時代。
小田急線の成城駅は、東宝スタジオの最寄り駅で有名です。最寄り駅ですが、歩けば10分あります。住所は成城一丁目。もう大蔵三丁目とは、ほとんど隣町。
訊きました。
山林の麓にある田んぼが団地群になったのは、昭和35年。映画が公開されたのは、昭和29年。東宝スタジオのまわりはロケ地だらけだったんですねぇ。
「東宝の隣には、新東宝もあったし」。もしかすると、現在の日大商学部のキャンパスかもしれない。
プールのある大蔵運動公園なんぞは、昨日できたくらいの新しさでしょうか。
「ところで、この山。何ていう名前なんです?」
「名前なんて、ないよ」と聞いて、ちょっとガッカリ。
せせらぎが、いつの間にか消えている。
秋の夕陽を浴びる樹木、と言いたいところですが。ちょっと佇んでいると、蚊が容赦なく襲って来る。団地の人、網戸バッチシやらないと、たいへんだろう。
団地内営業をやる、トラック八百屋のお母さんと再会。今回は、お父さんも同伴。
茨城県・竜ヶ崎から来てるんです。「毎週、木曜日」と言ってたから、僕の水泳日と同じ。
柿の話を向ける。「今年は、30度を超えた日が続いたから、実はたくさんできるけど、皆んな小さい」。商品で栽培しているなら剪定するが、ほっときゃ小粒ばっかなのだ。
竜ヶ崎では、田んぼをやっている。米でも、意外な話を聞きました。
「袋に、『こしひかり』って書いてあるでしょ? 一握りでも入れてあれば、『こしひかり』って書いていいの。米屋なら大丈夫だけど、スーパーのはどうかしらね」。
これ、常識なんですか? 知らなかった。
知らないトドメ。
「温暖化で、産地の特産というのが無くなっちゃった。茨城でも、ブドウがとれちゃうから。その内、北海道でサツマ芋ができるよ」。
今、団地。かつて田んぼのラストシーンをどうぞ。