くだらない傾向、加速してます

渋谷「たばこと塩の博物館」は、もう行きましたか?

11月4日までやってます。「江戸の判じ絵 これを判じてごろうじろ」展。

会期中、講演会も4回あります。すでに3回終了。残るのは、10月27日「物尽し判じ絵」だけ。これは、主要展示物に合わせた内容ですから、根っこから浸れることウケアイ。

講演者も、主任学芸員の岩崎均さんがやりますから期待できます。

僕が出掛けたのは、大阪教育大の小野恭端靖教授「ことば遊びの系譜 中世〜近世」。

そもそも、人類は冗談・洒落が好きな人と嫌いな人に分かれます。嫌いなら、「くだらない」の一言で終わり。くだらないことが好きな人は、とりつく島がない。

判じ絵も、くだらないことが好きな人の遊び。

「歯」があって、下に「猫」がひっくり返っている絵、これなあに? っていうナゾナゾ。

猫が逆さまだから、「こね」と読む。上が「は」だから、合わせて「はこね→箱根」。どうです、くだらないでしょ? 好きです。

「象」のそばに「金太郎」がいて、「ぞうきん」。町人が「鎌」でお釜を「切って」いる様子から、「かまきり」。

どんどん出てきます。

「物尽し判じ絵」なら、台所道具・座敷にある道具・野菜や果物・魚・干物と、一枚の絵にテーマを設けてナゾナゾ絵遊びをやった。

物だけじゃありません。

地名・名所・十二支・植木・草花・動物・人名・邦楽のタイトルと、なんでも絵で描いた。

判じ絵」は、江戸時代にピークを迎えたのです。

じゃあ、ことば遊びは江戸時代に突然現れたのかといえば、もちろん伝統があって、中世までさかのぼって研究しているのが、小野教授。

日本語には、同音異義語がたくさんあります。パソコンでひらがなを入力すると、どっさり漢字が出てくるでしょ?

やまと言葉の名詞、やまと言葉の動詞の連用形、漢語の熟語を使って、連歌を作る伝統が中世からあった、という講義。

掛け言葉、音をひっくり返す「返音」、上下や中間の読み音を省略する「略」。

都が戦場だった応仁の乱の時、御所では「二段なぞ」「三段なぞ」で遊んでた。

屋(や)の軒(のき)の菖蒲(あやめ)、これなぁに? 答え、雨。

・読み解き方、その1

「のき」は、「除き」「退き」とも読み取れる。

・読み解き方、その2

「あやめ」の「や」を「除き」すれば、「あめ→雨」。

殿上人にかぎらず、武将も庶民も歌にして、なぞなぞで遊んでた。

大学の先生だから、サンプルで取り上げる本も専門的。

閑吟集」、「隆竜節」、「淡路農歌」、「道外絵本 お伽なぞ」。

技巧も、どんどん複雑になる。

そして、江戸時代末期になると、出版産業が興って、一気に「判じ絵」本が人気になる。

知らず知らず使っている日本語。写真で、「判じ絵」を作りたくなってきた。

講演が終わって、ロビーのベンチでお昼ご飯中のお婆さん。後ろのポスターの、上の部分が欠けている。

これ、なんて読むでしょう?

「ポスター」の、上の「ポ」を除いて「スタ」。それに「婆さん」だから、「スタバ」と読む。くだらなぁい。

教授は、最後に2冊の本を紹介してました。

自著「ことば遊びの文学史」と、清水勲著「江戸戯画事典」。たまたま「事典」読んでました。

判じ絵」は、戯画の一種です。絵から分類すると、戯画も、狂画・軽筆・粗画・漫画・略筆・臨画と数限りなくあって、現在パラパラやってます。

大江千里、聴きましょ。