実に軽快な実験だったね、松丸本舗

来年1月に、「国立近現代建築資料館」が開館予定です。

もともとがアウトドア派じゃないから、建築も模型や図面を見てるほうがいい。やっぱり、現物を図面や歴史を跡づけるものとして見ている。

ペーパーやパソコンから、眼前の建物がよくできるねぇと感心する。

過程がブラックボックスだから、いちいち付き合う気にはなれません。とどのつまり、現場でトンカンやってるガテン諸氏に愛が向かう。

図面と地下足袋

でね、資料館では国際的な賞を受賞した建築家の図面が収集対象だという。ジョサイア・コンドルル・コルビジェのような日本で活躍した外国人建築家の図面も。

ここで、思うのだ。

どんなに著名な建築家でも、コンペに負けて実現しなかった案もあるだろう。むしろ、比率では叶わなかったアイデアのほうが多いのでは?

それも集めてほしい。想起して、実現したかしないかは紙一重。劣るとは思えない。建築家に言わせれば「審査員を、オレが審査したいよ」と悔し涙を流したでしょうから。

どちらにしても、実験は当たるも八卦、当たらぬも八卦

松丸本舗主義」松岡正剛著を読んでいて、本気で実験するとはこのことだ感じました。

僕が見立てた多読三賢人は、草森紳一さんと高山宏さんと松岡正剛さん。

紳一さんは、仙人。宏さんは、スナイパー。正剛さんは数寄者。いずれも生活感ゼロ。

本だけじゃないんです。文字という文字を、とにかく読まないと気がすまない兄さんがた。看板だろうが、チラシだろうが、駅弁の包み紙だろうが、メニューだろうが。

世界も人生も時間も読むためにある。宿痾になってるから、信用できます。

用立てるために速読するのとは、対極にいる3人。

ここまでくると、読み姿は剣豪小説に夢中なおじさんとか、冒険ものに夢中な少女のようにほほえましい。

無我の境地が向かう先は、リベラル・アーツ。教養と日本語で訳されますが、誤訳ですよねぇ。何つうのかなぁ? 知ることの自由さ、おもしろさ、冒険。

松岡正剛兄さん。

雑誌「遊」でデビューし、「千夜千冊」でピークに達したと思ったら、丸の内丸善3フロアーの一角で「松丸本舗」を始めたのが2009年10月23日。

事件でした。

知のユートピアのような、正剛さんの脳内「図書街」。その、ほんの一部を開陳した実験店。

片っ端から読みたくなる本のセレクトショップ。圧倒され、呆然とし、手が出なかった。

電子書籍の波は、業界再編を促す。大日本印刷は、丸善ジュンク堂・図書流通センターをまとめて傘下にし、そんな気配のなかでの開店。

そして、2012年9月16日閉店。1060日の実験。

「形影同参 残念至極  さらば松丸本舗」とは、兄さんの最後の書。無伴奏チェロ

でも、来店した人に「オレならこうやる」と芽が育つこと必至。