ヤツデの葉団扇で、山中を飛び回る

薄黄緑色のこれ、いったい何でしょう? 羽衣と言えば、キレイすぎる。どう見ても、とろろ昆布。天狗もお吸い物は好きだろうか?

川なら河童、山なら天狗。

千曲川源流域でこれを見た時は、「河童出て来ないかなぁ、天狗も飛んでないかなぁ」と、淡く期待する。スラヴァの声。

天狗といえば、落語の「天狗裁き」。

長屋のおかみさん、亭主が眠りながらニヤニヤ顔だったので、ゆり起して訊く。

「おまえさん、どんな夢を見てたの?」。

「えぇっ、なんにも見てないよ」。

そんなはずない、としまいにゃ怒リ出して、にぎやかな夫婦喧嘩が始まる。

隣から、亭主の友だちが来て止めに入る。一件落着するも、2人だけになると「兄弟の盃を交わしたオレとオマエだ。オレには夢の話を打ち明けられるな?」と迫る。

「ほんと、なんにも見てねぇって」と吐露しても、相手は納得するはずもなく、また喧嘩。

騒ぎを聞きつけた大家。仲裁し、またまた夢の話を強要する。言わない店子に「沽券にかかわる」と息巻いて、とうとう「お白州で決着を」と訴えに出る。

奉行が登場し、お調べの結果放免されるも、やっぱり奉行が聞きたがる。白状しないので、業を煮やした奉行は庭の松に男を吊るす。

夜になると、そこに一陣の風。

気付いたら、男の隣には天狗がいた。

「まず嫁が聞きたがり、次に隣家の男が聞きたがる。大家が聞きたがり、奉行が聞きたがった夢の話」。

「天狗は、聞きとうない。聞きたくはないが、言いたいのなら、言ってもいいぞ」と舌なめずりの天狗。

ここは千駄ヶ谷駅近くの国立能楽堂

興味しんしんの天狗の顔で頭いっぱいになってましたしたが、大森恵子さんの講義もちゃんと聞いてました。

「天狗信仰と能楽」。

能に、天狗を主役シテにした演目があるらしい。来年は能通いしたいなぁ。「車僧(くるまぞう)」「善界(ぜかい)」「大会(おおえ)」、そしてご存知「鞍馬天狗」。

山の神はもちろん、火の神、水の神でもある天狗。山伏・山岳修験者の化身であり尊像。

でも、高下駄とヤツデの葉団扇でしょ? 友だちになりたいよねぇ。

鞍馬天狗」は、義経に兵法を教えるので有名です。ところが、それ以外にも魔道のもので悪をなし、神や仏や僧に懲らしめられもする。

山の中に住んでいる天狗は、人が寝静まった夜に木を伐り倒すし、大笑いもするし、石をぶん撒く。

でも、人に依り着くと、その者は山中を自在に飛んで巨木に留まれる。

ストーリーを事前にわかっておけば、能って意外におもしろいんじゃなかろうか?

ところで、大学の応援団。団長コスチュームは、山伏から来てる? 小樽商科大学の女子団長、娘にほしい。