そろそろ処分しなけりゃいけないか
関東大震災後に建てられた、鉄筋コンクリートの集合住宅が同潤会アパート群。
表参道ヒルズの前は、同潤会青山アパート。代官山アドレスの前は、同潤会渋谷アパート。共に、有名ですね。
他も再開発されて、残るのは上野下アパートのみ。これも、すでに取り壊しが決定してます。
鴬谷アパートも、とうに取り壊されました。ここには、小学校の担任だった松沢先生が住んでました。僕の家は、道路を隔てた反対側にあったので、よく遊びに行った。
借家で、タバコ屋をやっていました。それほど、間口はいりません。
そのうち、家主の娘が洋裁店を始めて、一気に隣はマネキンやら布地やらファッション雑誌の華やかな雰囲気になった。
アーウィン・ショー著「夏服を着た女たち」を知った時、最初に思い出したのが、小学生で体験したこの洋裁店。
ショーのほとんどを翻訳した常盤新平さんが亡くなって、まず思い出したのも、この洋装店。
直木賞を取る前から、翻訳では名前を売ってました。ニューヨークもの、マファイアもの。狂乱の1920年代、アスピリン・エイジが好きになったのは、新平さんの導きでした。
「夏服を着た女たち」。
なんて、視線を感じるタイトルだろう。女たちは、町の共有財産なんだよ。Geri Allen。
初出は、ニューヨークのタウン雑誌「ニューヨーカー」です。そういうことも後から知って、バックナンバーを買い込みました。
正味は、読めませんが。
表紙が毎号ニューヨークの、ニューヨーカーの絵で、これでイラストレーターの名前を覚えたんです。本文の一口漫画も、楽しかったし。
若いカップルが、町を歩く。隣にかみさんがいるのに、男は、すれ違う女に目が行く。
「どうして、そういう物欲しげな目をするの?」と妻は怒る。どんな美人妻でも、これ男の本性。かみさんに指摘される前に、読ませておいたほうがいいよ。
さて、新平さんのこと。
「バックナンバーが大量にあるんだけど、生きている間には無理だな」と、すべて処分した話を読んだ時、何かが崩れるようで悲しかった。
いずれ僕も同じようなセリフを吐く予感。
あれから、何年経ったのだろう。New Yorkerも、LIFEも、VOGUEも、予感を実行しないといけない時が迫っているかな?