一つだけじゃいや、な人は好きだよ
タイトルが気に入ったので「テースト・オブ・苦虫」読みました。町田康兄さんの。
パンクやってたのが、小説を書けば芥川賞受賞。その他、名だたる文学賞を受賞しました。文学の世界におとなしくいれば、名刺交換はしたでしょう。
表に名前だけ、とかの名刺。
ところが、青春時代から血が騒いでバンド活動もやめられない。
自宅から歩いて仕事場に向かう。商店街でご飯食べたり、酒飲んだりの日々が「テースト・オブ・苦虫」に出てくる。
なりがパンクだから、不動産屋で物件探しをするも、まともに相手にしてくれない、といった話が延々と。
レコード会社のプロデューサーも、初対面なのに名刺をよこさない、といったぼやきも繰り返し出てくる。
コテコテの関西テイストなので、語りのリズムはお笑い。そこに、二転三転するロジッックがあってフィニッシュするエッセイ。体操の床運動のようなやつ。
そういえば、ミュージシャンが名刺を交換する風景って、想像できないなぁ。名刺には、新入社員の研修で「受け方・渡し方」の作法が終世つきまとい、退職直前の親父さんたちでも、律儀な交換をする。
あの場の無いところで生きたいのがミュージシャンだろうから、名刺をもってないのが普通。
ところが、いざ他人が名刺をくれないと傷つくってことがパンクロッカーでもあるんだね。康兄さんの文学は、ガラス細工ユーモア固めか。
ブログをやり出す前は、音楽はBGMでした。意識したことがなかった。
ところが、毎度掲載するとなると、いやでも「自分で選ばないと」いけません。
自ら選曲するって、未経験だからおもしろい。音楽が生活の一部になり、そして、そこはひねくれ者だから、音楽プラス・アルファの人にも興味がいく。
康兄さんに続き、菊地成孔兄さんにも興味が湧く。音楽と文学ではなく、音楽とファッション。
「服は何故音楽を必要とするか?」。
「ファッション・ニュース」誌で連載したものをまとめたもの。ファッションショーで、モデルたちがランウェイを歩きますね?
あの時の音についての論考。ダンス・ミュージックならぬ、ウォーキング・ミュージックと名付けたのは新鮮だった。
ブランド、ファッションではメゾンといいますが、それがわからないから、チンプンカンプン。音楽にいたっては、常識すら知らないから、想像つかない。
兄さんもそれまでファッションは意識外だったのか、文章が衒学的でした。
ですから、280ページの内、200ページはパス。残り、ショーの音を付けるミュージシャンとの対談部を読む。
4人の中では、アリエル・ウィズマンが気に入りました。ランバンの音を作ってます。
ウォーキング・ミュージックは、シンプルなハウスとかテクノとか、リズムがモノトーンが多い。らしいです。
対して、「暗闇の中で幽霊列車に乗ると、左右からびっくりするようなものが出てくるでしょ? 僕がやりたいことは、それです」とアリエル。
今回のデザインは、すごくアジア的でドイツ的、なんてデザイナーにリクエストされたら、どうします? オリエンタルだけど、メタルで。村祭りなんだけど、村の音楽は使わないで、なんて注文。
やっぱり、グチャグチャはいいよね。出身がモロッコというのも気に入る。