どうして? というくらい次々と

今年になっても、どんどん逝ってしまいますね。大看板、市川団十郎丈。

「あぁ、あのひとも」と、親がつぶやいていたのを耳にしていた10代、20代、30代。それを、今度は自分で「あぁ」とため息をもらす年齢になった。ブラームス

僕の歌舞伎体験は、30代になってから。市川猿之助さんばかり見てました。なにしろ、演出がハデだったからシロウトでもおもしろい。

贔屓のおばさん連と知り合うようになると、他の歌舞伎役者の評判も出てくる。

もちろん、けなします。そこで、自分もいろいろ見てみようというほど、歌舞伎に熱心にはなれなかった。

去年は、数回通いました。今年も1月に初春公演行きました。「夢市男伊達競(ゆめのいち おとこだてくらべ)」。国立劇場は、安い席があるので助かる。

2階のロビーに鎮座していたのが、五代目菊五郎と九代目団十郎。どちらも、朝倉文夫さん作の像です。九代目といえば団十郎のことといわれた「劇聖」。

「團菊」と呼ばれて明治歌舞伎の黄金時代を築いた2人でもあるから、ほかの名人とは別格の扱い。台本の河竹黙阿弥もバリバリの時代でしょうか。

九代目の長女の婿が十代目。その養子になったのが、十一代目。当代の十二代目も出自が複雑で、小説にもなってるくらい。

でも、伝統芸能の匂いたつ妖しさは、血統の複雑さがないと生まれないかもしれない。

当代尾上菊五郎丈の「夢市」。

もう、初春を寿ぐにはピッタリの演目でした。今年は、作者の河竹黙阿弥没後120年だそうです。

演目の頭に「西行が猫 頼豪が鼠」と付きます。鼠の悪霊が出てきて、将軍源頼朝を悩ませる。これは、木曾義仲の化身。

悪霊退散のため、上覧相撲が開催されて物語が始まる。

侠気の市郎兵衛、けなげな女房おすま。三浦屋の傾城や新造は匂うような、いい女。2月になって正月を語るのは、いかにもマヌケです。

ですが、1日も休日なしで動く現代にあって、歌舞伎だけはお正月にお正月をキッチリ演じるのだった。

終演して、手拭いが撒かれる。

僕は一番安い席ですから、舞台から一番遠い。ところが、足元まで飛んで来ました。見ると、グルグル巻きに小さくしてゴム輪でとめてある。ここまで固めてあれば、最上階にも来るんだね。

いよいよ、4月2日に歌舞伎座が開場します。

こけら落としに、団十郎さんの名前がありました。「弁天娘女男白浪」の日本駄右衛門役。弁天小僧菊之助役は、菊五郎さん。5月、6月も公演予定でした。

心残りだったでしょう。海老蔵兄さんが「何十年ぶりに名跡復活」となる歳月は、お父さんと同じくらいあるのかな?