陳列棚のある部屋があればなぁ

手元に、小さな切り抜きがあります。

新宿の紀伊国屋書店で、出版記念に開かれた山本タカトさんの個展の記事。画集の名前は「ネクロファンタスマゴリア」。

死と、幻想と。最後の「マゴリア」は何のアレゴリーかわかりませんが、とにかく「お耽美」な絵であることは想像がつく。

個展を見なくても、画集を入手すればいい安心感があったので行きませんでした。で、今その画集見てます。

全部、少年少女の絵。そこに骸骨や昆虫や植物がからんで、過剰に想像力が増殖した絵になってます。見る人を、誘惑する絵。

誘惑する方法も、声高じゃありません。気付いたら、全身を粘膜で張り付かれているようなもの。こういう絵は、青春時代にハシカのように通過するのです。僕は、未だハシカ感染中。

画題が、また妖しい。

・ストリゴイカ  ルーマニアの死せる吸血鬼

・エムブリヲ   胎児

クトゥルー   海底都市で瞑る、かつての支配者

・キマイラ    ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ怪獣

画集では、下絵と完成画が出てました。浸ってます。

ネクロフィリアって言葉があるでしょ?

死体に欲情する性的嗜好・性的倒錯。すでに、「性的」とは縁がない年齢。ところが、知らずに集めているのはネクロフィリアに通じる命の無いもの・終わったものであることが多い。

骸骨、石、羽、流木、金属の削りかす、ガラス製品、剥製、貝殻、歯車、標本、鳥かご、仮面など。

持ってないけど、欲しいもの。

石膏像、玉子の殻細工、厨子、珊瑚、レンズ、動力機械、おもちゃの兵隊、月球儀、房のある紐など。

中世から19世紀にかけて、王と眷属が世界中から集めた珍奇なものが、財力で豪快に建てた「驚異の部屋」に陳列されているイメージというのかなぁ。

類書はたくさんあります。

今回見ているのは「寄想の陳列部屋」河出書房新社刊。

集めた物を置くために、壁を仕切り棚にしたくも、壁があるほどの部屋は無し。夢は、ガレージなどで見かける部品箱を用意すること。でも、目の前に広がらないのが難点。

広い倉庫に、窓以外は陳列棚になっている場所で暮らしたい。アドリアン・エレート