「行列、しばらく〜〜〜」待たれぃ

観梅しました?

公園に行かなくても、近所の塀ごしに見られますね? 水戸に住む従兄弟は、毎年梅干しを手づくりしてます。それこそ、ゴミのポリバケツ1〜2つぶん。

「やってみたらどう?」と勧められて、青い実を一抱えもらったことがありました。すだれに置いて、乾かす。

この時期、通信販売で梅干しの広告が出ます。自分が手づくりしたものとは別物の、ふくよかで丸やかで、加えて「○○干し」と風味もありそうな一品。

今、満開になった花びらもあれば、まだ咲きかけの梅もあり。

家光公は、標高26m先の梅を見て「部屋に飾りたい」と思った。でも三代将軍ですから、そこは自分で動くようなことはしません。

「誰(たれ)か、手折(たお)ってまいれ」。

先代将軍の法事に芝・増上寺をお詣りした帰り、愛宕山の麓に通りかかる。総勢、2000人の一行。

傾斜38度の石段を前に、並みいる大名たちは指名されないように顔を伏せる。目配せをする。

馬術指南役は、「なんの因果で」と我が仕事を恨んだことでありましょう。3名が選ばれて、騎乗のまま石段を上るはめになる。

トイズ・ファクトリー

講談「寛永馬術」です。

これ、浪曲にもありました。江戸東京博物館の大ホールで「梅花のほまれ」。玉川太福さん。

落語はたっぷり聞いてます。そこから、講談や浪曲にも手を出したので、調子はなじんだもの。

舞台もまた、大袈裟でいいんだわ。

浪曲師の前にある演台に、普通の風呂敷10枚ぶんくらいの布が富士山型に広がりをもって掛かる。

後ろに控える椅子は、用意されてますが坐りません。ちょうど、マッキントッシュがデザインしたもののように、背当て部が高い。立っている浪曲師の頭より高い。そこにも、演台と同じデザインの布がかかる。

演台の隣にも、小振りのテーブルがあって布が掛けてある。演者の名前が大書してあります。

加えて、下手・上手にも屏風の前に富士山布。合計5枚、すべて贔屓筋からの贈りもの。相撲の化粧回しと同じ。

さて、愛馬にまたがった馬術指南役。見上げる石段7合目でチカラ尽きた馬にムチを入れて、綿のように泡吹く馬とともにもんどりをうつ。

「他日に」と注進された将軍、「それもそうだな」と千代田城に向かい隊列を整えようとした刹那、

「行列、しばらく〜〜〜」待たれぃと、大音声(おんじょう)が響く。「誰だ? よけいな目立ちたがり屋は?」。

待ってました、曲垣(まがき)平九郎、やせ馬と共に登場。同じく、石段7合目で馬停まる。

3人の馬術指南役との違い。

その1.
「もうすぐ頂上だから」と、ムチを当てなかった。

その2.
愛馬の吹き出る汗を、手拭いでぬぐった。

その3.
塩をなめさせた。(ポカリスェットと同効果)

その4.
急峻な下が見えないように、扇子で馬の目を覆う。

その5.
「てっぺんに上れば、富士山が見えるぞ」と声掛けする。

みごと、梅を手折った平九郎。コーチングのプロフェッショナル。