お2人は、実に上品な笑顔だった

古本屋の組合は、東京に4つの拠点があります。

五反田会場で即売会を開催するのは、南部支部。古本屋自身の仕入れの場であると同時に、一般人も入場できる。

一般人は用があって、つまり探書のために訪ねる。ネットでも神田でも見つからないので、即売会に出掛ける人がほとんどでしょう。

僕の場合は、漂うため。

いろいろな方に出会いました。中に有名人もいて、山口昌男さんも見かけました。蔵書を、廃校した学校に保管するほどの書痴。しかも、買ったらちゃんと読む人。眼精疲労歴50年のような目。

会場で、本を探す姿に見とれる。

彼の前に、机が浮かびます。背に書庫が浮かびます。壁には、アフリカあたりから買って来た仮面。机の隣には、道化が使ったであろう錫杖。

81歳で逝去しました。

Alexandre Tharaud

好きでした。

文化人類学からスタートして、軽々と他の専門分野に縦横無尽に越境する。いたずらっ子のような、軽々さに魅了されたんです。

明治が維新し、それまでの幕府シンパは野に下る。何になったかといえば、暇人になった。暇つぶしで、役に立たないことに精を出す。それが大著「『敗者』の精神史」。

零落へのあこがれ、ここに始まる。

岩波ホール支配人だった高野悦子さんも亡くなりましたね?

2時間ばかり話して、映画を選ぶ目が開かれた思い。周縁こそ大事なものがある。ミニシアター通い、ここに始まる。

いまだ、2人の笑顔のように笑えない自分がいる。